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2016年10月

公開市民講座報告

 去る10月15日、常磐祭の一環として公開講座「『文学』から離れて文学を考える ~『事実』と『フィクション』の間~」が、開催されました。英文学科教員2名に加えて外部講師2名をお招きしたシンポジウムでした。

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 最初に島高行・本学教授がジョナサン・スウィフト『ガリヴァー旅行記』(1726年)を題材に、現実の政治や宗教が小説の中でいかに風刺的に描写されているか、また事実がフィクションの世界でどのように変容されるかという実態を分析し、シンポジウムの基調を示しました。
 次に評論家・ジャーナリストの武田徹氏が、ベトナム戦争について書き著した開高健を採り上げ、解説しました。開高は『輝ける闇』(1968年)を上梓するまで、原稿を何度も書き直したり破棄したりすることによって、ノンフィクションとフィクションの間をさまよい、逡巡したのでした。
 三番目にジェトロ・アジア経済研究所・地域研究センター長である
武内進一氏が、ジョゼフ・コンラッド『闇の奥』(1902年)について論じました。それは、19世紀にベルギー領だったコンゴにおける過酷な植民地支配を描く同書を紹介し、現代アフリカの研究者の視点で読み直しながら論じる発表でした。この話は筆者に、自らの祖先を調査して黒人奴隷制度を描いたアレックス・ヘイリー『ルーツ』(1977年テレビドラマ化)を想い起こさせました。そういえばヘイリーも、小説『ルーツ』を事実(ファクト)とフィクションを融合させた「ファクション」と呼んでいました。

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  四番目に土屋結城・本学准教授が、最近映画化された『パディントン』(マイケル・ボンド『くまのパディントン』シリーズ、1958年~)を採り上げました。映画では、南米ペルーからイギリスにやってきたくまのパディントンの姿にイギリスに移住してきた移民の歴史が重ねられており、原作が発表された時とは異なる意味が付与されたという点において、事実がフィクションにはたらきかけた例と言えるのではないか、と説明しました。
 最後に講師の間の質疑応答があり、シンポジウムは終了しました。会場には、近隣の住民の方々など多数の聴衆が集まり、熱気に包まれていました。アンケート結果も好評なものが多く、一般の方々と大学関係者との間で有意義なひとときを共有することができました。
 なお当日のシンポジウムの詳細な記録は、あらためて本学のホームページに掲載される予定です。     

(村上まどか・記)