図書館員のお薦め本紹介

図書館員がお薦めする本を紹介します【日野・渋谷】

図書館員がお薦めする資料を紹介します。
図書館の所蔵情報も入れておきますので、ぜひ、借りて読んでみてください。

「嵐が丘」/　エミリー・ブロンテ著

　19世紀のイギリスの女流作家、エミリー・ブロンテ(1818-48)が30年の短い生涯で残した唯一の長編小説です。
　舞台はイングランド北部ヨークシャーにあるハワースという村で、荒涼とした大地に紫色のヒースの花が咲き誇るこの場所は作者の故郷でもあります。
　物語は、荒々しい自然を背景に、嵐が丘という屋敷に住むキャサリンとヒースクリフの激しい感情と情熱が描かれ、宗教観や倫理観を超えた作品といわれています。
　私は大学の時にこの本に出会い、描かれている風景描写や時代背景を通して、作者に興味を抱きました。
　実際に訪れて目にしたハワースは見渡す限りの荒野で、「嵐が丘」のをモデルとされている「トップ・ウィゼンズ」という石造りの廃墟があり、物語の世界そのものでした。
　今でも忘れられない風景として心に刻まれています。
　作者がこの小説を書いた背景には、生涯過ごしたハワースの厳しい自然環境が影響しているといわれています。内向的で孤独を愛した彼女の内に秘めた強い感情を表現したものが「嵐が丘」という作品だったのではないかと思います。
　読み終えた後に、ぜひ「嵐が丘」の舞台を訪れてみてください。
　エミリー・ブロンテの世界観を直接肌で感じることで、より味わい深い作品になると思います。
　翻訳本と原書が日野と渋谷に多数所蔵してありますので、是非手にとってみてください。

図書館所蔵情報

「全然、知らずにお参りしていた神社の謎」 / 合田道人著　　　　　　　
「トキオ」 / 東野圭吾著

　おススメ本として、2冊紹介します。
　1冊目は『全然、知らずにお参りしていた神社の謎』です。私達にとって身近な神社。
　お参りに作法があるのは知っていますが、鳥居のくぐり方は？御手水(おちょうず)で手を洗うのはどちらの手から？口に含んだ水はどうすればいい？具体的なことは意外に知らないことが多いです。御朱印・お守り・柏手の作法・お参りの順序なども楽しく読んで学ぶことができます。伊勢神宮・出雲大社・富士山浅間神社では、参拝順序や祭られている神様のこと、ほかにも著者のお勧めパワースポットがいくつも紹介されています。
　正しい参拝方法でお参りしたいものです。ぜひご一読を。
　2冊目は『トキオ』です。遺伝的な病気で死の間際にいる息子を前に、父親は過去の自分を思い出します。このお話は、どうしようもない若者だった父親が、未来の息子との出会い、人生と向き合い、成長していく物語です。時を生きる青年･･･時生。その存在が時に頼もしく、切なく、愛しく。巧みに表現されています。「親の愛」って表面ではわからない、深いものだなと涙した一冊です。深い題材ですが、展開が素晴らしく、ユーモアがあり、著者の魅力がよく描かれています。
　2020年『トキオ』刊行。2005年文庫本で『時生』に改題されています。ご注意を。

図書館所蔵情報

「和菓子のアン」/　坂木司著

　推理小説、食べ物が出てくる小説、お仕事小説が好きな私が表紙を見て思わず手に取ったのが『和菓子のアン』でした。
　表紙に大量のお饅頭がずらっと並んでいてインパクトがあったのを今でも覚えています。
　百貨店の和菓子店に勤める杏子、通称アンちゃんが和菓子にまつわる謎解きをするお仕事ミステリーです。
　小さいころから身近にあった和菓子ですが、この小説を読んで、和菓子の言葉遊びや、昔からの言い伝えなどを知り、日本文化や和菓子の奥深さを再確認することができました。
　それからというものの、デパートの食品売り場に行くと「今月の上生菓子はなんだろう」と和菓子屋さんの前で立ち止まるようになりました。季節のうつろいも感じられて楽しいです。
　ハラハラドキドキするミステリーもいいですが、たまにはほのぼのとしたミステリーはいかがでしょうか。
　ぜひ息抜きに読んでほしい１冊です。
　著者の坂木司さんの作品はお仕事小説やほのぼのとしたミステリー小説が多いので、他の作品もぜひ読んでみてください。

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