修学・就職支援フェア
学生一人ひとりの修学状況、本学の就職状況や就職支援の取り組みを保護者と情報共有し、学生の支援とつなげます。修学・就職支援フェアは、学生、保護者の皆さんにとって非常に有意義なプログラムとなっております。
※ 2019年度実施内容掲載
「人手不足で売り手市場だから就活は安心は誤解?!」
深澤晶久・文学部国文学科教授(キャリア科目)

大卒求人倍率は大企業(従業員数5千人以上)0.42倍に対して中小企業(同3百人未満)8.62倍-。文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育)が9月14日、渋谷キャンパスで行われた「修学・就職支援フェア」で講演し、キャリア教育の役割や本学の取り組み、最新の就職事情についてレクチャーしました。大卒求人倍率が平均1.83倍と数字上は「かなりの売り手市場」とはいうものの、大企業と中小企業の企業間格差は20倍強に拡大していると指摘。今年の就職戦線を振り返りながら「人手不足で売り手市場だから就活は安心」との通説に疑問を呈した上で、「今までのようなつもりで例えば大手企業の一般職だけに絞るということだと思わぬ苦戦を強いられる」などとアドバイスしました。講演の狙いを改めて深澤先生にうかがいました。
深澤教授は講演で、社会で今求められているキャリア教育の役割として①「まなぶ」と「はたらく」をつなぐ②激動の21世紀をしっかりと生きる力を身に付けさせる③視野を広げるために社会との接点を少しでも多く体験させる-の3点を挙げ、「人生100年時代を迎えて、ライフステージに応じたキャリア教育が生涯にわたり必要」と強調しました。その上で、「国際理解とキャリア形成」(2年生以上)や「キャリア開発実践論」(3年生以上)などの本学のユニークなキャリア教育の実践を紹介。「(キャリア教育を通じて)徹底して社会を意識させるとともに、学生の『主体性』の醸成を最優先課題として取り組んでいる」と語りました。
史上空前の売り手市場と言われます。企業の採用スタンスは実際のところ、どうなのでしょうか?

これは私の私見です。「欲しい人材以外は、採用計画数を満たさなくても採用しない」という大企業と「何が何でも採用数を確保したい」と必死な中堅・小規模企業の間で企業間格差が広がっていると感じます。大企業は学生時代の経験重視を強めており、「可もなく不可もないという学生は不合格」。大学生活で何かに打ち込んできたという経験がないと厳しい。着想がユニークで物事を柔軟に考えられる地頭の良さも問われます。倫理観や常識、マナーなど基本的なことは当然のこととして、プラスアルファも求められます。
最初から大手企業の一般職狙いだと厳しいとは、どういう意味でしょうか?
10年ぐらい前までは「大手企業に一般職で入って事務の仕事をして…、結婚して専業主婦になって…」とは、普通の女子大生が普通に描く普通の幸せでした。でも今、女子学生に人気の一般職の採用枠は大手企業を中心に減っています。もともと大企業で一般職の採用枠の多かったのは銀行でしたが、AI活用で定型業務を減らすとともに国内の店舗数を絞り込んでいます。また単純作業を減らすシステム投資余力のある大手の商社やIT系、メーカーでも一般職は減少傾向にあります。
企業が求める人材像も変化しています。女性は結婚したら退職する傾向にあったのは昭和の時代の話しで、今は産休・育休制度も定着。女性社員であっても長く働いてもらうことになります。入社すれば職種などに関係なく新人のうちから重要な仕事を任せられる場面も増えてきました。
とはいえ、今の若者たちの中には、残業や転勤、昇進を求めず、土日はちゃんと友達と遊びたいなどの理由で一般職志望が根強いのも事実です。自宅から通勤したい、地方転勤はしたくないという場合、総合職でも、そもそも事業の性格上転勤のない大企業もあるほか、転勤しても首都圏に限られるインフラ系の企業、またグローバル展開をしていても勤務地が限定される大手企業の総合職もあるので、よく企業を研究してもみてはいかがでしょうか。
学生の皆さんにアドバイスはありますか?
まず一つ目が「脳みそに汗をかく」ほど考え抜いてほしい、ということです。今は考えなくても手元のスマホで検索すれば大体のことが事足りてしまう。でも考え抜くことが本当に大切です。二つ目には「まず獣身を成して、後、人心を養う」。福沢諭吉の言葉ですが、何事も体が資本。体を鍛えて健康が一番であるということ。そして三つ目に「出来るか出来ないかではなく、やるかやらないか」。無理だな、ハードル高いなと思う場合にも諦めずにチャレンジし、突き抜けた経験をすることが自信になります。
「将来学びながら活躍できるベースを大学で創る」
槙究・大学教育研究センター長

リテラシーも、そしてコンピテンシーも育む-。槙究・大学教育研究センター長は、日野、渋谷両キャンパスで開催した修学・就職支援フェアの全体説明会で「大学で、何を学ぶか?」と題して講演。「平成の30年間で学生を取り巻く環境も、社会が大学卒業の社会人に求めることも、大きく変化した」と指摘した上で、「学生一人ひとりが将来にわたり学びながら活躍していけるベースづくりを本学は取り組みたい」と強調しました。講演の狙いやポイントを改めて槙先生にうかがいました。
槙先生は講演で、音楽や酒類の楽しみ方など平成のライフスタイルの変化を振り返るとともに、定年制や企業の寿命、大学入試改革など学生を取り巻く環境も大きく変化したと強調しました。その上で、本学が2019年4月にスタートさせた共通教育改革の取り組みを紹介。具体例として「リーダーシップを身に付ける」「考えて書く、書いて考える」の2つ講義を挙げました。
加えて、リテラシーとコンピテンシーをさらに高めるため、同年4月から本学独自の学生支援制度J-TAS(ジェイタス)を導入したと説明。授業が学びの中心としつつも「学校以外での学生のさまざまなチャレンジを学園としてサポートする」と語り、学生一人ひとりに「個性を活かして、チームで活躍する」能力を身に付けさせたいと訴えました。
大学生活は平成の約30年間でどう変わったのでしょうか?

平成初期の1980年代、大学入試は共通一次試験でした。その頃の大学生活は、教員はティーチャーであり、学生は授業のノートを取り、成績はテストで一発勝負。ちょうど安価な10円コピーが普及した頃でもあり、字のきれいな友人のノートをみんなでコピーして回し、試験は一夜漬けで乗り切るという大学生活でした。ところが、30年経った今、教員はコーチあるいはファシリテーターに変わり、授業は「教師の背中を見て学ぶ」といった受け身ではなく自ら学ぶ主体的な姿勢が求められ、単位はテストの一発勝負ではなくて毎回の授業の振り返りをもとに決められるようなものも増えてきました。
また大学での学びも、授業を通じて知識を基に問題解決力を高め、「勉強ができる人」を目指すリテラシーに加えて、授業や課外活動を通じて「コミュニケーション能力」や「諦めずにやり抜く力」「人を巻き込む力」であるコンピテンシーを高めることも求められるようになりました。
なぜ大学教育にリテラシーに加えてコンピテンシーが求まれるようになったのですか?
企業側に人材育成の余力が少なくなり、従来の「働く力は社会人になってから身に付けてもらえばいい」という考え方から、「社会人基礎力」を学生のうちに身に付けてほしいというニーズが強まっているためです。社会人基礎力は「人が社会で生きていくのに必要な基本的な力」(経済産業省)であり、3つの能力と12の能力要素で構成されますが、核家族化や地域社会の崩壊などの社会状況の変化により、子どもたちが自然に身に付けることが難しくなったという事情もあります。
実践女子大学・短期大学部は、リテラシーやコンピテンシーの育成にどう力を入れているのでしょうか?
2019年4月から新たな学生支援制度J-TAS(ジェイタス)をスタートさせました。これは一人ひとりの学生生活の記録を同システム上に蓄積し、それを活かした個別支援体制の構築を目指したもので、「成長診断テスト」「学修ルーブリック」「自己成長記録書」など7つの要素を中心に構成されています。
このうち、「社会人基礎力」を測定できるPROG(プログレス・レポート・オン・ジェネリック・スキルズ)を実践生専用にカスタマイズしたのが成長診断テストで、リテラシー(問題解決力)とコンピテンシー(対人基礎力と対自己基礎力、対課題基礎力)を測定できます。
J-TAS導入によりどんな効果が期待できるのでしょうか?
成長診断テストを1年生と3年生の時に行い、比較することで本人が成長を実感したり、本人が気づかない自分の強味やポイントを担任教員や学生支援スタッフ、キャリアアドバイザーなどがアドバイスすることが可能になります。これにより、4年間の振り返りができるようになり、就活の際に「4年間何をしてきたのですか」と問われても、自信と希望を持って臨めるようになります。