食科学部助手の吉本穂香さんが、小麦粉、卵、バターアレルギーに対応した「こめまめフィナンシェ」のレシピを開発し、「第11回食物アレルギー対応食 料理コンテスト」(公益財団法人ニッポンハム食の未来財団主催、厚生労働省・消費者庁・農林水産省後援)のおやつ・デザート部門で審査員特別賞を受賞しました。「こめまめフィナンシェ」は、食物アレルギーを持つ方々に安心とやさしさを焼き上げたお菓子です。吉本さんは助手の立場から「食材が制限されることは決してマイナスではなく、新しいおいしさを生む挑戦であるということを、学生たちに伝えていきたい」と話しています。
審査員特別賞の盾
卒論の研究成果をコンテストに。まさか賞をいただけるとは!」と驚きと喜び
受賞を喜ぶ吉本さん
「まさか賞をいただけるとは思っていなかったので、受賞の連絡をいただいたときは驚きましたが、とてもうれしかったです」。受賞後、吉本さんは素直に喜びを表現しました。同コンテストで本学の関係者が受賞したのは2年連続です。
表彰式は3月15日、日本栄養大学(旧女子栄養大学)駒込キャンパスであり、吉本さんは記念の盾などを受け取りました。審査員からは「ひよこ豆の水煮汁、豆腐、米粉、アーモンドを加えた独創的なフィナンシェです。甘さと香ばしさが絶妙で、ティータイムにもよく合う作品」との高評価を受けました。式後、大学内のレストランで受賞記念交流会(食事会)があり、他の受賞者と交流したり、過去の最優秀賞受賞作品を実際に食べたりしました。
なぜ、フィナンシェ?「非常に難しいけれどやりがいがあるから」
盾を持ってポーズ
生活科学部食生活科学科管理栄養士専攻を2024年度に卒業後、助手の道に進みました。もともと、食のスペシャリストを養成する管理栄養士専攻を選んだのは、「家族が病気がちで食べ物に制限があったり消化機能が弱かったりする状況をフォローしたい」という思いがあったから。今回のコンテストへの応募は、「アレルゲン除去フィナンシェの開発」がテーマだった、在学中の自身の卒業論文の研究成果として行いました。
フィナンシェはフランス発祥の焼き菓子で、バターの香りを思い浮かべる人も多いと思います。主な構成食品は、即時型食物アレルギーの代表的食材である小麦粉(小麦)、卵白(鶏卵)、バター(乳)。フィナンシェを選んだ理由は、吉本さんが一番好きなお菓子ということに加え、「3つの食物を使わずにフィナンシェを作成することは、非常に難しいけれどやりがいのある」という気持ちが強かったからです。
3つの食物アレルギー物質を何に置き換えるかが、今回のレシピ開発のポイントでしたが、吉本さんは、小麦粉を米粉に、卵白をアクアファバ(ひよこ豆の汁を煮詰めたもの)と裏ごし豆腐に、バターを太白ごま油と発酵バターフレーバーに置き換えることにしました。
米粉は小麦粉に比べて吸水率が高く、給油率が低いという特徴があります。また、焼き菓子の生地を膨らませるためには、卵白の力が重要です。うまく膨らまないことも多く、ふんわりとした食感を出すことも難点の一つです。さらに、置き換える食材は、通常は使用しない材料ばかりなので、配分の調整に苦労しました。
また、バターの代替食材を検討している時には、最初、豆乳バターで料理していましたが、アクアファバを使用していることもあってか、かなり豆の主張が激しいものになってしまいました。このため、豆乳バターを太白ごま油に置き換え、発酵バターフレーバーでバターの風味を足しました。
完成まで10カ月かけ、試行錯誤繰り返し
レシピは構想から完成までには約10カ月を要し、学校の調理室を使用したり、家族や友人にも何度も試食をお願いしたりしながら、試行錯誤を繰り返しました。最初は生地がうまく膨らまず、「何を食べているのか?」と思うほどの出来でしたが、何度も失敗を重ね、そこから学び、「自分の合格ラインの完成度までもってくることができました」と振り返りました。「アレルギーのある人もない人も一緒に美味しく食べられるフィナンシェを目指していたので、特定の層の誰かというよりはさまざまな人に食べてほしい」と話しています。
食物アレルギー対応食 料理コンテストとは
表彰式であいさつする吉本さん
「食物アレルギー対応食 料理コンテスト」は、「すべての方に食べる喜びを感じてほしい!」という思いから発足しました。「食」についての研究を行っている大学生・高校生から料理教室の先生、食物アレルギーのお子さんを持つ母親まで、様々な背景を持った応募者の経験や実践を、食物アレルギーと向き合っている方々へ浸透させることを目的としています。11回目となる2025年度には、食事部門、おやつ・デザート部門合わせて計553作品の応募がありました。その中から書類審査及び実食審査を経て、部門ごとに最優秀賞・優秀賞・審査員特別賞が12作品選出されました。
吉本さん「自分だけ違うメニューになる寂しさを解消したい」
私の一番好きなお菓子のフィナンシェのレシピで、受賞できたのはとてもうれしいです。レシピはまだまだ改善の余地がありますので、もっと安定した完成度を追い求めていきたいです。今後は、コンテストのような特別な場だけでなく、日常の食卓でも簡単に取り入れられる、再現性の高いレシピを考えていきたいと思います。食物アレルギーのある方々が、自分だけ違うメニューになってしまう寂しさを解消し、家族や友人と同じ料理を食べる場を増やすことができたらいいと思っています。
<取材を終えて>「誰かのためを思い工夫したレシピには、大きな愛情と幸せがあふれる」
リモートで吉本さんにインタビューする小島さん
初めてレシピを見た時、「本当にこの材料でフィナンシェが完成するのだろうか」と驚きました。食物アレルギーを持っていない私は、普段何気なく焼き菓子を口にしています。しかし、改めて考えてみると、多くの焼き菓子には、食物アレルギーの原因となる食材が数多く使われています。「食が制限されること」は、つい悲しいことのように捉えてしまいがちです。けれど、今回の取材を通して、誰かのためを思い、既成のレシピに工夫を重ねていくことは、大きな愛情であり、そこには幸せがあふれているのだと感じました。「こめまめフィナンシェ」、皆さんもぜひ作ってみてください!(文学部国文学科4年、小島名奈水)








