K1マリン・ニコル選手が語る、夢を言葉にすること。自分らしく挑戦し続ける生き方
スイス国籍で、キックボクシング世界王者のマリン・ニコル選手が来日し、自身のこれまでの歩みや、夢を実現するために大切にしていることについて実践女子大学の渋谷キャンパスで講演を行いました。11歳でボクシングを始め、世界王者となった後、フランスからスイスへ拠点を移してキックボクシングに転向。現在はスイス代表として世界選手権で2度の優勝を果たしています。今回、長年の夢だった「日本で戦うこと」を実現するため来日したニコル選手は、自身の経験を振り返りながら、「大きな夢は、まず言葉にすること。そして、その夢を信じて一緒に歩んでくれる人を見つけることが大切」と語りました。
11歳で出会ったボクシング。「ここが自分の居場所だ」と感じた
ニコル選手は、フランスで育ち、11歳のとき、偶然訪れたボクシングジムでボクシングと出会いました。「ボクシングは、私が完全に自分自身でいられる場所。安心できる、自分の居場所でした」幼い頃のニコル選手は、とても内気で、何かにつけて「すみません」と謝る性格だったそうです。ある日、練習中に椅子にぶつかり、椅子にまで謝ったことをコーチに笑われたというエピソードも紹介しました。そんな彼女が、やがて「自分は誰よりも強くなりたい」と思うようになったそうです。
「世界王者になる」言葉にした夢が、人生を動かした
当初は試合に出場せず、ひたすら技術を磨いていました。ある時、競技大会への出場をコーチに申し出たところ、「君は優しすぎる。試合に出たらやられてしまう」と断られました。ところが、その翌日、コーチが経験豊富な選手とのスパーリングを用意。ニコル選手はそこで相手選手たちを次々と破り、競技者としての道を歩み始めます。
そして「世界で一番になりたい」という明確な目標を持ち、トレーニングに打ち込みました。通常であれば、地域大会、国内大会を経て世界選手権へと進みます。しかし、ニコル選手は、わずか6試合の経験で、パリで行われた世界選手権に急遽出場しました。当時の世界王者の対戦相手が負傷したため、代役として呼ばれたのです。その試合で世界王者を破ることはできませんでしたが、その実力を知らしめる結果となりました。次の世界選手権では、試合前に手を骨折するアクシデントにも見舞われました。代表の座を失うことを恐れ、負傷を隠して練習を続けたと振り返ります。痛みに耐えながらも、その大会で初めて世界王者のタイトルを手にしました。「25歳になる前に世界王者になる」。幼い頃から抱いていた夢を、実現した瞬間でした。
自分自身の新しい気づき
世界王者になった一方で、抱えていた手のけがの治療が必要となり、競技から離れざるを得なくなりました。11歳からずっと「ボクサー」であり続けてきたニコル選手にとって、リングに立てないことは、自分自身を失うような苦しい経験でした。その後、療養のために、アフリカ東方のインド洋にあるモーリシャス共和国へ移住。そこで、ボクシングを教えることに新たな喜びを見つけます。「私はボクシングをすることだけが好きなのではなく、ボクシングを見せること、人に伝えること、人を励ますことが好きなのだと気づきました」世界王者のタイトルだけではない。人に勇気を与え、誰かの可能性を広げることも、自分にとって大きな達成だったと語りました。
その後、ニコル選手はヨーロッパへ戻り、スイスを新たな拠点とし、キックボクシングに転向しました。既にスイス代表として世界選手権に出場し、2度の世界王者に輝いています。
現在の二コル選手のコーチは、自分の独自のスタイルを無理に変えようとはせず、弱点を補い、新しい技術を加えることで個性を生かしてくれたといいます。その経験を通して、ニコル選手自身も「自分らしさ」を大切にするようになりました。かつては「強いボクサーは怖い顔をしていなければならない」と考え、好きな服やメイク、かわいいネイルなどを隠そうとしていた時期もありました。しかし今は違います。「リングの上では強く、リングを降りれば優しくていい。私は私らしくいていいんです」対戦前に選手同士が向き合う「フェイスオフ」でも、相手をにらみつけるのではなく、思い切り笑顔を見せる。それも、自分らしい戦い方の一つです。
「大きな夢は、まず言葉にする」
ニコル選手が伝えたのは、「大きな夢を持つこと」だけではありません。「夢は大きく持つ。そして、その夢を言葉にすることが大切です」心の中でどれだけ大きな夢を描いていても、言葉にしなければ、実現に向けた一歩を踏み出すことは難しい。だからこそ、「私は世界王者になる」「日本でプロとして戦う」と声に出して伝えてきたといいます。そして夢を言葉にするだけでは十分ではありません。「夢を実現するには、たくさん練習して、努力しなければなりません。自分の夢を信じて、一緒に進んでくれる人を見つけることも大切です」ニコル選手にとって、その存在が夫であり、コーチであり、家族や友人、スポンサーなど、これまで支えてくれた人たちです。「ボクシングは一人で戦う競技ですが、その道のりは一人ではありません」長い練習の日々も、雨の中のランニングも、一人では続けられない。夢を共有し、時には背中を押してくれる人がいるからこそ、挑戦を続けられると語りました。
「日本で戦う」という新たな夢を実現
キックボクシングの世界王者となったニコル選手が、次に掲げた夢は「日本で戦うこと」でした。キックボクシング発祥の地である日本は、以前から大好きな国。これまでにも5回日本を訪れており、今回は初めて「観光」ではなく「試合」のために来日しました。今回の試合は、ニコル選手にとって日本で戦う初めての機会です。しかも、これまでのキャリアの中でも最大級の試合となります。「世界王者になった後、私は新しい夢を口にしました。日本でプロとして戦う。そしてコーチを日本に一緒に連れていきたい。そう伝えたんです」その言葉を現実にするために努力を続け、ついにその夢を実現しました。ニコル選手の歩みは、「自分には無理」と限界を決めるのではなく、まず夢を言葉にし、信じてくれる人たちとともに一歩ずつ進むことの大切さを伝えてくれました。







