難波 雅紀(文学部英文学科教授)
アメリカ文学・文化
『ニューイングランドの「丘の上の町」-ピューリタニズムの統治論・救済論・終末論』
出版社:小鳥遊書房(2026年6月)
ピューリタン神学とアメリカ的象徴の生成
17世紀初頭、イングランドからニューイングランドへ渡った第一世代ピューリタン。彼らが掲げた「丘の上の町」というヴィジョンはいかに構想され、いかに再解釈されつつ語り継がれてきたのか。ジョン・ウィンスロップ、ジョン・コットン、トマス・シェパードらの文書を読み解き、ピューリタニズムの神学的視点から植民地時代=アメリカ合衆国前史を描き出す。ケネディ、レーガン、オバマといった歴代大統領が象徴として利用してきた「丘の上の町」とは?
■著者より
本書は「ニューイングランドの『丘の上の町』」という一見限定された主題を扱いながらも、副題を「ピューリタニズムの統治論・救済論・終末論」としています。それは、「丘の上の町」を単なる象徴として論じるのではなく、その背後にある思想構造を明らかにすることを端的に示そうと考えたからです。そして、「統治」「救済」「終末」という三つの神学的要素を相互に関連づけ、救済論が共同体を規定し、その共同体が統治原理を生み、さらに終末論が共同体に歴史的使命を与えるという、ピューリタンの思想のダイナミズムを描こうと試みました。
この思想構造の根幹にあるのは、旧約の預言が新約において成就するという予型論(typology)的発想であり、それはアメリカ建国以前の政治文化を理解するための鍵概念でもあります。その意味で、本書は単なる植民地史ではなく、政治神学(political theology)の研究としても位置づけられるかも知れません。
実際、そういった意図がどこまで本書で達成されているかは、読んでくださった皆さんの評価・判断に委ねたいと思います。
■目次
プロローグ アメリカの神話
第一部 統治論(Considerations on Governance)
第一章 荒野における土地投機--約束の地の経済システム
第二章 「丘の上の町」のエトス--ジョン・ウィンスロップとジョン・コットンの場合
第三章 神の道具の政治学--総督ジョン・ウィンスロップの植民地統治
第二部 救済論(Considerations on Soteriology)
第一章 ニューイングランド方式の誕生--アン・ハッチンソンと反律法主義論争
第二章 見える聖徒の物語--トマス・シェパードの『自叙伝』と『回心体験告白』
第三章 背教と殉教--セイラムの魔女裁判における二つの救済
第三部 終末論(Considerations on Eschatology)
第一章 預言の成就--ピューリタンと荒野に逃げ込んだ女
第二章 キリスト教年代学における千年王国と終わりの時
--ニューイングランドのピューリタン終末論に向けて
エピローグ アン・ハッチンソンとナサニエル・ホーソン








