笠原 良太(生活科学部生活文化学科専任講師)
(家族社会学、ライフコース社会学)
『炭都夕張の約束—ビルドアップから再出発までの70年』
著者:笠原良太・水島久光・嶋﨑尚子・中澤秀雄・島西智輝・青木隆夫
出版社:寿郎社(2026年9月)
企業・自治体による三つの約束—「飛翔」「再起」「回生」が喧伝され続け、やがて石炭政策の転換と炭鉱事故によって衰退していった日本を代表する〈炭都〉夕張。
その70年をさまざまな角度から捉え、国に借金を返し終わる2027年を目前にして、改めて「夕張」とは何だったのか—を問う画期的論文集。
■著者より
夕張市は「財政破綻」で注目されがちですが、そもそも炭鉱で栄えた「炭都」でした。最盛期(1960年頃)には20以上の炭鉱があり、約12万人が住んでいました。エネルギー転換(石炭から石油へ)によって石炭産業が衰退するなか、夕張は国策によって炭都であり続けることを求められ、1970年代に新たに2つの炭鉱(北炭夕張新鉱、三菱南大夕張炭鉱)が開発されました。炭鉱労働者の家族は、国・企業・市が掲げる〈約束〉を信じ、炭鉱で働き、生活してきました。しかし、どちらの炭鉱も凄惨な事故を起こし、1990年にすべての炭鉱が閉山しました。その後、「炭鉱から観光へ」の約束も果たされることなく、2006年に財政破綻となり、現在人口は5600人にまで減少しました。2027年3月に夕張市は国に借金を完済する予定ですが、その後の「自立」が課題となっています。
本書は、社会学・経済史・メディア研究など、さまざまな視点から夕張を描きました。夕張の炭鉱労働者とその家族が、いくつもの〈約束〉に左右されながらも苦闘した軌跡をとおして、私たちは多くを学ぶことができます。人びとの生活・人生と社会がどのように関連しているのか、改めて考えるきっかけになれば幸いです。
■目次
はじめに 水島久光
序章 炭都夕張への視角 嶋﨑尚子
第1部 「飛翔」の約束—北炭・三菱の新鉱開発、昭和30年代~40年代前半
第1章 石炭産業の構造変化と夕張におけるビルドアップ 島西智輝
第2章 ビルドアップと「疑似租界」夕張の再編—約束履行を阻む重層的分断 島西智輝
第2部 「再起」の約束—スクラップアンドビルド、昭和40年代~50年代前半
第3章 三菱による新鉱開発と炭鉱街の形成—南大夕張への集約と統合 嶋﨑尚子
第4章 北炭の新鉱開発と労働者の再就職・集約 笠原良太
第5章 新鉱コミュニティでの労働者家族の生活・教育 笠原良太
第6章 再起の希望をつなぐ—1977年の「奇跡」と「物語」 水島久光
第3部 「回生」の約束—新鉱の事故と閉山、昭和50年代後半~60年代
第7章 二つの新鉱の事故、そして閉山—炭都夕張の崩壊 笠原良太・嶋﨑尚子
第8章 資本撤退と中田市政の「約束」
—ファンタスティック石炭の歴史村体制の構想飽和と自治 中澤秀雄
第9章 ふるさとの幻影—喪失と郷愁の鏡像 水島久光
終章 炭都夕張の約束—「再生」と「自立」にむけて 笠原良太
おわりに 青木隆夫








