公衆衛生学研究室
<指導教員>佐々木渓円
<発表日時>2023年3月30日
<発表場所>論文投稿
食物アレルギーをもつ乳幼児は、原因となるアレルゲンを含む食物の除去が必要となる。これまでの研究では、不適切な食物除去によってカルシウムなどの栄養素が不足することが指摘されている。しかし、管理栄養士が配置されていない医療機関では、保護者が栄養素の充足について適切な指導を受けられているかは、明らかにされていない。また医師の指示に基づかない除去では、保護者の多くはインターネットなどから得た知識をもとに判断していた。インターネットで得られる情報には不十分な内容が含まれているため、食物除去による栄養素の不足や、代替となる摂取方法に関する知識が得られない可能性がある、その現状を研究対象とする。
研究方法としては、インターネット調査会社に登録している食物アレルギー児の保護者を対象として、食物アレルギーや適切な栄養素を摂取できる食生活に関する知識をどのように得ているかを明らかにする調査を企画した。この研究を卒業論文だけでなく学術論文として発表することで、本学のゼミナール活動の学術的な活性化だけでなく、管理栄養士として乳幼児の食生活支援にも寄与すると考えている。
News
2022年度
乳幼児期は成⻑が著しい時期であり、適切な量の栄養素を摂取すること必要である。しかし、⾷物アレルギー児はアレルゲンを含む⾷物の除去が必要となるため、「⾷物アレルギー診療ガイドライン2021」では⾷物除去は必要最⼩限とすることや、⾷物除去に伴う栄養素の摂取不⾜を防ぐ必要性が⽰されている。
⼀⽅、乳幼児栄養調査では、医師の診断に基づかない⾷物除去が少なくないことが報告されている。これらの不必要な⾷物除去を経験している児では、栄養素の摂取不⾜が⽣じている可能性がある。⽜乳アレルギーは乳幼児期の代表的な⾷物アレルギーの⼀つであるが、⽜乳の除去に伴うカルシウムの摂取不⾜が⾻密度の低下や低⾝⻑のリスクを⾼めることが報告されている。この対策として、⼩児アレルギー疾患に関する学会等では⽜乳アレルギー児の保護者に対する栄養指導の必要性が論じられている。しかし、⽜乳アレルギー児の⾷⽣活において、患児の⺟親がカルシウムを摂取する必要性を理解しているのか、不⾜するカルシウムを充⾜する⽅法を患児の⾷⽣活に取り⼊れているかは明らかにされていない。
以上の背景から、本研究では、⽜乳アレルギー児の⺟親が実践しているカルシウムの摂取⽅法やカルシウム不⾜に対する不安について把握した。さらに、その状況について、カルシウムを摂取する必要性について保健医療従事者から情報を得た者とそれらの専⾨職から情報を得なかった者との間で⽐較することで、⽜乳アレルギー児の保護者に向けた指導のあり⽅を検討した。
研究⽅法
0 歳から6 歳の⽜乳アレルギー児をもつ⺟親を対象とした横断調査を2022 年8 ⽉17 ⽇に実施した。調査対象者は楽天インサイト株式会社の登録パネルである。まず、登録パネルに対してスクリーニング調査を⾏い、調査対象者200⼈を抽出した。
スクリーニングに⽤いた条件は、「性別=⼥性」、「回答者の年齢=15歳以上50歳未満」、「⽜乳アレルギー児の有無=あり」、「⽜乳アレルギー児の年齢=0歳以上7歳未満」、「居住都道府県=東京都、埼⽟県、千葉県、神奈川県、茨城県、栃⽊県、群⾺県」である。調査対象者に対して、表1に⽰した調査を⾏った。質問の回答で⽜乳・乳製品の除去経験がない対象者は、⽜乳アレルギー児ではないと判断し解析から除外した。
さらに、インターネットパネル調査の信頼性を担保するために問9 にダミー選択肢として設定した「油脂アレルギー」について、「医師の診断に基づく除去経験」があると回答した4⼈を不正回答とみなして除外し、171⼈の⺟親を解析対象者とした。