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礼法研究部がラオスとの懸け橋に。日本文化への関心高まる中、十二単の着装と着物パフォーマンスを披露

2026/04/27(Mon)

 日本の伝統的な礼儀作法(礼法)を学び、実践する本学の文化系サークルの礼法研究部が3月13日から18日までラオスの首都ビエンチャンを訪れ、十二単(現代装束)の着装披露と着物パフォーマンスを計4回実施しました。今回の訪問は、天皇、皇后両陛下の長女愛子さまが昨年11月、ラオスを訪問したことを契機に実現したもの。日本とラオス両国の国際親善の一端を、本学が担う形となりました。

着装披露のためラオスを訪れた一行

4会場で披露。福祉施設で車いすの女性に十二単を

十二単をまとう車いすの女性

 現地での公演は、国際交流基金の文化芸術交流事業として、福祉施設、商業施設、ビエンチャン中等教育学校、ラオス日本センターの計4会場で行われ、多様な層に向けて日本文化を発信しました。一行は総勢24人。うち、礼法研究部員は11人で卒業生4人も参加しました。
 1回目は、障がいのある女性の自立支援を行う福祉施設で開催されました。会場は決して広いとは言えない空間でしたが、観覧者との距離の近さがかえって温かな雰囲気を生み、学生たちは丁寧に着物の所作や礼法を伝えました。特に印象的だったのは、車いすを利用する現地の女性に十二単を実際にまとってもらったことです。重さ十数㌔にもなる装束を身にまとい、その美しさと重みを体感する姿に、会場からは大きな拍手が送られました。格式高い宮廷装束を車いすのまま体験してもらうのは初めての試みで、日本文化の新たな伝え方を示すものとなりました。

在ラオス大使夫妻も訪れ。永井客員教授が着装の解説

 2回目以降の公演では、より多くの観客を前に、華やかな演出が展開されました。商業施設での公演では、礼法研究部の学生たちによる着物パフォーマンスが大きな注目を集めました。赤・青・白の帯を自在に操り、ラオスの国旗をかたちづくる演出は、会場から歓声が沸き上がるほどの盛り上がりを見せました。さらに、帯を花の形へと変化させ、日本の桜とラオスの国花のプルメリア(ラオス語でチャンパ)を表現する場面では、両国の文化を重ね合わせる象徴的な演出となり、文化交流の意義を視覚的に伝えるものとなりました。3回目の中等教育学校や4回目のラオス日本センターでの公演では、日本語を学ぶ学生を中心に多くの若者が来場し、最大で約250人が観覧するなど、日本文化への関心の高さがうかがえました。
 小泉勉在ラオス日本大使夫妻がご出席されたのは商業施設での2回目の公演です。冒頭、大使はあいさつの中で、十二単が日本の皇室の重要な儀礼において非常に格式の高い装束であること、日本とラオスの外交関係樹立70周年を記念して、愛子さまが昨年公式訪問されたことに触れ、「言葉や国境を越え、お互いの伝統文化の美しさに触れ、敬意を払い合うことは人と人の心を結びつける大変力強い懸け橋になります。イベントを通じて、ラオスの皆様に悠久の時を超えた優美な十二単の世界をご覧になっていただき、日本への親しみや興味を一層深めていただくことを願います」と強調されました。

ラオスの国旗をイメージした帯の披露

両国の国旗を持っての振袖ドレスのパフォーマンス

卒業生による着装の様子

 十二単の着装披露では、皇族の方々の伝統的な宮廷装束を担い、800年近い歴史のある衣紋道髙倉流の直門本部教授、永井とも子本学客員教授が解説を務め、モデルとなる「お方さま」への着装を担当する礼法研究部卒業生2人の「衣紋者」が一枚一枚重ねていく過程を丁寧に説明しました。まず、長袴の色の違いによる意味を示し、続いて肌に近い位置に着る「単ひとへ」、さらに、五枚の衣を重ねる「五衣いつつぎぬ」へと進みます。色の重なりが季節や意味を表す日本独自の美意識について語ると、観客は静かに耳を傾けていました。装束の重さが約14~16㌔、かつらを含めると約20㌔にもなることが紹介されると、会場には驚きの声が広がります。

 最後は、源氏物語の一場面に由来する「空蝉うつせみ」の実演が行われました。30分かけて着装した装束が、わずか一本の紐を解くだけで瞬時に脱げる様子は、技術の精緻さと日本文化の奥深さを象徴する場面となり、観客に強い印象を残しました。また、大使夫人が空蝉の中に入られる体験をしました。

大正天皇のご即位以来の皇室の装束。意義深い、海外での披露

友好の印としてラオスの国花と桜をイメージして作った髪飾り

 こうした一連の公演は、単なる日本文化の紹介にとどまらず、「本物」を伝えることの価値を体現するものでした。ラオス訪問に同行した佐藤悟学長特別顧問によると、現在の皇室の装束の原形ができたのは大正天皇のご即位の時だそうで、今回持ち込まれた本学所有の十二単(正式名称五衣いつつぎぬ唐衣からぎぬ裳も)は衣紋道髙倉流26世宗家、髙倉永佳氏(本学客員教授)が監修し、現在の皇室の儀礼で着用される装束に極めて近い形式を持つものです。日本でさえ一般には目にすることがなかなかできない正統な装束を、海外の地で実際に披露したことは、文化的にも極めて意義深いものとなりました。

ラオスの大重さんから始まり、多くの関係者の協力でイベントが実現

衣紋者を務め体験者の補助も行う大重歩悠子さん(中央)

 そして、この一連の文化交流は、実は一つの偶然の出会いから始まっています。愛子さまがラオスを公式訪問された際、国際交流基金の日本語パートナーズとして大重歩悠子さん(学習院大学4年、髙倉流門弟)が日本語の先生のサポートをしているビエンチャン中等教育学校を視察しました。帰り際、愛子さまは「学習院ですよね?。」と大重さんに話しかけられ、立ち話をしました。実は、大重さんが大学で行っている十二単の活動に関連して愛子さまと共通の知人がいることがご縁でお言葉を交わされたそうです。その短い会話をきっかけに、現地の生徒や関係者の間で「十二単を見てみたい」という声が広がると同時に、もともと「十二単を世界に伝えたい」という夢を抱いていた大重さん自身も「大学で学んでいる十二単をラオスの人たちに見せたい」という気持ちの高まりを覚えました。そして、師匠である永井客員教授に相談。「門弟を支えたい」という思いから永井客員教授は「愛子さまが日本文化と世界をつなげようとしておられるなら私たちにできるのは実際にやることよね」と応じたそうです。
 そして、永井客員教授の呼びかけに応えたのが、実践女子大学礼法研究部の学生や卒業生です。さらに、学習院大学の衣紋道さくら会のメンバー、衣紋道髙倉流門弟や佐藤学長特別顧問も加わり、多くの関係者の協力のもとで今回の訪問が実現しました。

司会を務めた石橋名月さん

 公演終了後、大重さんは「日本文化に興味ある生徒がいろんな質問をしてくれたことと、たくさんの生徒から楽しかったと言ってもらえたのがうれしかったです。日本とラオスをつなぐ懸け橋になれたことについて、たくさんの人に感謝したいです」と話しました。また、今回の舞台で、司会進行役を務めた礼法研究部の前部長の石橋名月さん(文学部英文学科4年)は「私自身、海外で公演をするのは初めての体験でした。練習の段階では思うようにいかないことが多く、まったく環境が違うラオスでの本番では大丈夫だろうかと心配していました。しかし、永井先生にあなた達は本当に本番に強いわね、と仰っていただいたことを私たちも実感するほどうまくやり遂げることができました。また、現地の人たちも感動していることを舞台から見ていても感じられたので、今回、ラオスに日本の伝統文化を伝えることができて良かったと思います」と喜んでいました。
 一人の学生の思いから始まった小さなきっかけは、教員、大学、国際機関を巻き込みながら、やがて二国間の文化交流へと発展しました。そこには、日本文化を正しく、そして誇りをもって伝えようとする関係者の意志があります。今回のラオス訪問は、愛子さまの訪問を契機としながらも、民間の力によって実現した文化交流の好例です。本学は、その中心的な役割を担い、本物の日本文化を世界へ届けると共に、人と人とをつなぐ懸け橋としての役割を果たしました。今後もこうした取り組みを通じて、国境を越えた相互理解と文化の共有がさらに広がっていくことが期待されます。

永井客員教授「現場での成長が何よりの成果。学生にとって将来の宝物」

十二単の着装を指導する永井客員教授

 「本物」というものは、ラオスのように日本の古典や装束について何も知らない方たちが見ても、感動していただけるということを実感しました。また、地元の子どもたちの目の輝きやその見ている仕草は本当に夢中になって見てくださっているということが感じられました。また、今回同行した学生や卒業生、門弟たちが、大変タイトなスケジュールの中で、4回の公演すべてを見事にこなしてくれたことに感動、最後の公演は疲れがたまっているにもかかわらず最高の出来で、感極まってしまった程でした。会場の広さもすべて違うところを臨機応変にフォーメーションを組み直したり、舞台設営や掃除も学生が率先して行ってくれたりしました。普段の練習が徹底されていたからこそ、実現できたものと思います。一回目より二回目、二回目より三回目と上手になり、稽古では得られない、本番をやり遂げたという自信が学生に芽生え、現場で益々成長につながったことが何よりも大きな成果であったと思います。
 これらの経験は、学生にとって将来の大切な宝物になった事と信じております。

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