食の「川上」から「川下」まで、食産業全体を横断的に学ぶ。「食デザインオープン講座」で株式会社叙々苑と連携授業を行いました(9/15・16)
食科学部 食科学科は、9月15日・16日に、外食産業を担う株式会社叙々苑(以下、叙々苑)と連携授業を行いました。本授業は、2026年4月より実施している、食産業をテーマとした実践型の産学連携授業「食デザインオープン講座」の一環です。
「食デザインオープン講座」は、食品メーカーにとどまらず、一次産業、流通、外食など食産業全体への理解を深めることを目的に企画されたものです。耕種農業・畜産といった一次産業(川上)から、食品メーカー・卸(川中)、飲食店・小売(川下)まで、食産業を構成する各領域の企業と連携し、産業全体を横断的に学ぶことで、学生の課題発見力・提案力・協働力を養います。
今回の叙々苑との連携授業は、「川下」を学ぶ授業として株式会社シンクロ・フードの協力により実現したものです。叙々苑から人事部課長 原口 利恵子氏、料理部部長 長谷川 大氏を講師に迎え、「おいしさには訳がある—五感と記憶で考える食のデザイン」をテーマに、料理そのものだけでなく、五感やサービス、おもてなしなどが食事にどのような付加価値を生むのか、外食産業の仕事とあわせて学びました。
体験や五感を通した食事の付加価値を考える
ごま油の香りを嗅ぎ比べ、嗅覚が食事の印象に与える影響を確認
五感やサービスなど、料理以外の要素が食事の付加価値にどう関わるのか。
授業ではまず、食事の印象をつくる要素を体感するワークを実施。「思い出に残っている食事」を振り返り、「何を食べたか」だけでなく、「誰と、どこで、どのような場面で食べたか」という体験も食の記憶につながることを確認しました。
さらに、同じ牛肉を白、黒、緑の皿に盛り付けた写真による見え方の違いや、食事の際の音、ごま油の香りを通して、視覚・聴覚・嗅覚が「おいしさ」の感じ方に与える影響を確かめました。
1,500円と2万円のランチを比較し、価格差が生まれる理由を考える課題について説明する長谷川氏
そのうえで出されたのが、同じ食材を使った1,500円のランチと2万円のホテルのランチコースを比較し、その価格差がどこから生まれるのかを考える課題です。グループで話し合った学生からは、盛り付け、食器、接客、店内の雰囲気に加え、調理工程や立地、ブランド、料理を提供するタイミングなど、さまざまな要素が挙げられました。
ここで長谷川氏が投げかけたのが「お客様は何を得たのか、何を買ったのか」という問い。学生にとって、料理や食材だけでなく、見た目や香り、サービス、空間、そこで誰とどのような時間を過ごすのかという体験まで含めて食事の価値がつくられているという視点を得るきっかけとなりました。
叙々苑のサービスを学び、初来店客への接客を提案
叙々苑に抱くイメージを出し合い、接客やサービスの特徴を整理
叙々苑ならではの接客とサービスについて考えるため、まず学生は叙々苑に抱くイメージを出し合いました。
挙がったのは「高級」「内装にお金がかかっている」「接客が丁寧そう」といった声。こうしたイメージの背景にある食材の仕入れや店舗運営、五感を意識したサービスについて、これまでの授業内容を振り返り、叙々苑ならではの特徴を改めて整理しました。
初めて叙々苑を訪れるお客様を想定し、ふさわしいサービスをグループで検討
その内容を踏まえ、 続くグループワークでは、初めて叙々苑を訪れるカップルの食事場面を想定し、どのようなサービスがふさわしいかを考えました。アレルギーや苦手なものの確認、システムやおすすめメニューの案内、焼き方・焼き加減の説明、料理を提供する順序の確認など、学生からはさまざまな提案が挙がりました。
長谷川氏によると、学生が挙げたサービス提案は、 実際に叙々苑で行われている接客やサービスと重なるものばかりとのこと。その一例として、お客様との会話などから記念日であることに気付き、スタッフの判断でお祝いのプレートを用意する事例も紹介されました。
料理とおもてなしは『車の両輪』。叙々苑が大切にする接客の考え方を説明する原口氏
叙々苑では接客の基本はマニュアルに定める一方、おもてなしそのものは一律に決めていません。基本となるサービスに加え、その場の状況を見ながらスタッフ自身が考え、行動する「おもてなし」を大切にしています。根底にあるのは、「お客様においしさを届けたい」という共通の思いです。原口氏は、料理とおもてなしを「車の両輪」に例え、どちらか一方が欠けても、お客様に十分なおいしさを届けることはできないと説明しました。
学生は、基本となるサービスに加え、目の前のお客様に合わせて考え、行動する「おもてなし」が、食事に付加価値を生む大切な要素であることを学びました。
10年後の外食産業で人が担う役割を話し合う
10年後の外食産業について考え、グループごとに将来像を発表
授業の最後は「10年後、外食業界はあると思うか」をテーマにしたグループワークです。学生は「10年後のお店」「働く人」「お客様の食事の仕方」「人間にしかできないこと」の4つの視点から、外食産業の将来像を考えました。
発表では、全グループが「10年後も外食産業は存在する」と回答。テクノロジーの活用が進むという見方が示される一方で、アレルギーへの配慮や、お客様に合わせたおもてなし、気遣い、臨機応変な対応などを、人が担う役割として挙げるグループもありました。
外食産業が担う『食の価値を高め、お客様に届ける』役割について説明する長谷川氏
学生の発表を受け、長谷川氏は、相手の気持ちを考えながら声を掛けたり、状況に応じて行動したりすることの大切さを強調。その上で、「外食産業には、生産者が愛情を込めて大切に育てた食材に、調理や盛り付け、温度、香り、器、照明、接客、空間、音楽などを組み合わせて食の価値を高め、その『価値』をお客様に届け、未来につなげていく役割がある」と説明しました。さらに、外食は食事をするだけの場ではなく、食文化や食への理解を深め、日常とは違うワクワクする時間や感動、記憶を生み出す場でもあると語りました。
今回の叙々苑との連携授業を通して、学生は、食材が消費者に届くまでに関わる多様な仕事から、食事に付加価値を生むサービスやおもてなし、これからの外食産業に求められる人の役割まで、食産業を幅広い視点から捉えました。食に関わる仕事や課題への理解を深めるとともに、自身の学びや将来のキャリアについて考える機会となりました。
受講した学生のコメント
・叙々苑のサービスについてのお話を聞き、料理の品質だけでなく、お客様一人ひとりに合わせた「心からのおもてなし」を大切にしていることが印象に残りました。マニュアル通りの接客ではなく、お客様の様子や会話から求めていることを考えて行動するという考え方に魅力を感じました。
・グループワークで発表し合うことで、自分では考えつかなかった意見を聞くことができ、見方や視野が広がったように感じました。
・これから自分たちが関わるかもしれない業界について知り、これからの時代の課題や、自分たちが何をしていくべきかを考えることができて良かったです。







