「銀座で商うということ」を企業の取り組みから学ぶ! 本学と大妻女子大学の学生が松屋銀座と連携授業を行いました(10/15)
生活科学部 生活環境学科(現 環境デザイン学部 環境デザイン学科)の学生が、10月15日(木)、株式会社松屋(以下、松屋)の協力のもと、百貨店「松屋銀座」での教育視察・ストアツアーに参加しました。今回の連携授業は「生活環境学セミナー」の一環として、本学のファッションビジネス研究室(大川知子教授)と大妻女子大学の工芸デザイン研究室(須藤良子准教授)が協業して実施したもので、両大学から計17名の学生が参加しました。「百貨店の魅力再発見」をテーマに、松屋の担当者から経営戦略やデザイン、地域共創について学んだ後、実際の売り場を見学。さらに質疑応答を通して、商品の販売にとどまらない百貨店の役割や魅力について考えました。
松屋銀座で実施された連携授業の様子
事前調査で生まれた疑問を胸に、百貨店の経営戦略を学ぶ
学生たちは事前に銀座の街や松屋銀座を調査
連携授業に先立ち、学生たちは「銀座で商うということ」をテーマに、各自で銀座の街や松屋銀座を訪れ、調査結果をレポートにまとめました。学生からは、銀座の街並みに歴史と新しさが共存していることや、商品の配置、ディスプレイ、接客サービスなどに魅力を感じる一方、高級感のある雰囲気や商品の価格帯から、若い世代には敷居が高いのではないかという意見も挙がりました。
松屋の歴史を紹介する小笠原氏
こうした事前調査を経て、当日は松屋銀座で社員による講義を受講しました。まず、広報部の小笠原由佳氏が「松屋の歴史」を紹介。続いて、同部の矢吹直子氏が、「銀座の街の特性」について解説しました。矢吹氏は、銀座が一つの大きな商店街のように、商店や地域の人々が主体となって街づくりを進めていることを説明。看板や建物の高さに関する独自のルールを設け、街並みの統一感を守っていることや、地域が一体となって祭りなどの催しを運営していることを紹介しました。
百貨店と一般的な商業施設の違いや、外商について説明する紀野氏
続いて、顧客販促部の紀野珠輝氏らからは、「百貨店と一般的な商業施設の違い」について説明がありました。百貨店では、館全体で販売員の接客教育を行い、売り場を問わず統一したサービスを提供しています。さらに、顧客一人ひとりの好みや要望に合わせて商品を提案する「外商」など、百貨店ならではの仕組みも紹介されました。
松屋銀座独自の販売促進策を話す柏木氏
同じく顧客販促部長の柏木雄一氏からは、松屋銀座独自の販売促進策として、閉店後の館内を利用したハロウィン関連のお化け屋敷や、バレンタインの催事などの事例が取り上げられました。バレンタインの催事では、他社が海外ブランドを数多く集める企画から、日本の食材や国内のショコラティエに着目した企画へと転換。作り手との交流やその場で味わう体験を提供するなど、商品を販売するだけではない価値を生み出す工夫について学びました。
デザインと地域共創の取り組みを知り、実際の売り場へ
「デザインコレクション」について説明する小原氏
松屋銀座7階の「デザインコレクション」については、生活デザイン部の小原樹氏から説明を受けました。同売り場は、松屋と日本デザインコミッティー※が約70年にわたり協働して運営しています。建築家やデザイナーなどで構成される同コミッティーのメンバーが、流行に左右されず、長く愛用できることや機能美を重視して商品を選定。国内外の優れたデザインの商品を取り扱っており、松屋は「販売の専門家」として、その価値を消費者に伝え、社会に広める役割を担っています。
松屋が地域の作り手と協働する事例を紹介する吉川氏
日本各地のものづくりや文化の魅力を発信する取り組みを学ぶ
また、IPクリエイション課の吉川祐未氏からは、「地域共創」について説明がありました。青森県のねぶたの技術を活用したクリスマス装飾や、伝統工芸品に新たなデザインを取り入れた商品開発など、松屋が地域の作り手と協働する事例を紹介。デザイン力と銀座という立地を生かし、日本各地のものづくりや文化の魅力を発信する取り組みを学びました。
講義後は、小原氏の案内で7Fの「デザインコレクション」「デザインギャラリー1953」を見学。学生たちは、専門家による商品選定の考え方や、それぞれの商品に込められたデザインの特徴について説明を受けながら、実際の売り場を見学しました。
その後、2班に分かれて、社員の案内のもと館内を巡り、催事場や化粧品売り場、地下の食品売り場などを見学。各売り場で展開される商品や企画について話を聞き、講義で紹介された「百貨店」「松屋」「銀座」ならではの取り組みを実際の店舗で確かめました。
講義後のストアツアーの様子
現場での学びを深める質疑応答。「百貨店の魅力再発見」へ
ストアツアー後の質疑応答
ストアツアー後の質疑応答では、学生から、若い世代の来店を促す工夫や商品の選定基準、今後の百貨店のあり方について質問が寄せられました。
若い世代へのアプローチについては、アニメを題材とした催事が、これまで百貨店を利用したことのない人にとって来店のきっかけになっていると説明。特定の年齢層に限定するのではなく、一人ひとりのニーズに応え、幅広い顧客との接点をつくることを重視していると語られました。
商品の選定基準については、「誰に届けたい商品なのか」という視点が重要だと回答がありました。担当者が実際に産地を訪れ、作り手と直接会って制作現場や商品に込められた思いを知ることも大切にしているとのこと。作り手が自ら売り場に立ち、顧客と交流する機会を設けるなど、購入に至る体験にも価値を見いだしていることが紹介されました。
若い世代の来店を促す工夫や商品の選定基準、今後の百貨店のあり方などについて質問が寄せられました
また、「オンラインでの買い物が広がる中、百貨店は今後どうあるべきか」という質問も挙がりました。社員からは「オンライン販売への対応を進める一方で、商品を実際に手に取ったり、対面で接客を受けたりできることが、実店舗ならではの価値である」との考えが示されました。
今回の連携授業では、学生たちは講義やストアツアーを通して、事前調査で魅力を感じた銀座の街並みや松屋銀座の丁寧な接客、商品選びの背景にある工夫や考え方について理解を深めました。また、「若い世代には敷居が高いのではないか」という課題感に対しても、来店のきっかけをつくる催事や、一人ひとりのニーズに応えるサービスなど、多様な取り組みに触れました。社員の説明や実際の売り場での体験を通して、事前調査では見えなかった百貨店の工夫や役割を学び、「百貨店の魅力」を新たな視点から捉える機会となりました。
受講した学生のコメント
- 印象に残ったのは、松屋銀座のサービスや社員の方々の対応に表れている、お客様に寄り添う姿勢です。特に驚いたのは外商の仕組みです。もともと外商については知っていましたが、一人のスタッフが150人ものお客様を担当しながら、それぞれの好みや記念日まで把握していると聞き、自分がお客様だったら継続して利用したくなると思いました。また、働いている方々が自分の軸を持ちながらキャリアを重ね、より良い松屋銀座をつくり出しているところにも感動しました。
- 百貨店は商品を販売するだけでなく、地域の魅力やデザインを発信する役割も担っていることを学びました。食品売り場の「銀座フローズングルメ」は、名店の料理を自宅でも楽しめるだけでなく、フードロスの削減にもつながると感じました。また、売り場の配置や催事会場の動線など、買い物客が楽しめる空間づくりにも多くの工夫がありました。特別招待会など、直接的な利益につながらない取り組みにも費用をかけ、お客様に「また来たい」と思ってもらうことを大切にしている点も印象的でした。今回の連携授業を通して、実店舗ならではの体験を提供することの重要性を学びました。今後は、見た目だけでなく、利用者の行動や心理まで考えた空間づくりを意識したいです。
- 特に、デザインに関するお話が印象に残りました。事前課題で見学していた7階の「デザインコレクション」では、日本デザインコミッティーのメンバーが商品を選定していることを知りました。また、商品の並べ方や説明書きにも工夫があり、デザインを学ぶ自分にも参考になると感じました。隣接する「デザインギャラリー1953」は、さまざまなジャンルの作品が数多く展示されているにもかかわらず、圧迫感がなく、じっくりと落ち着いて見られる空間になっている点が魅力的でした。
※日本デザインコミッティー:「グッドデザインの啓蒙」の為に設立された組織。多岐に渡るデザイン領域において、日本を代表する29名(2026年現在)が、松屋銀座を活動の場として様々なデザイン活動を行っている。








