
図書館長から とっておきの一冊
今号も図書館⻑のおすすめする、とっておきの本をご紹介します。
館長の池⽥三枝⼦先生は国文学がご専門ですが、様々な分野の本を取り上げていただける予定です。
図書館の所蔵情報を確認して、ぜひ読んでみてください!
常設展示室 / 原田マハ [著]
人生を変えていたかもしれない本
私の母は毎年トイレの壁に「12ヶ月カレンダー」を貼っていました。12ヶ月分の日付が記され、12枚の絵が添えられたカレンダーです。
ある年のカレンダーの絵は西洋絵画でした。そしてトイレに座る私の目の前に金髪の少女の絵がありました。それを見た5歳の私はなぜか「これは私だ!」と思い込んでしまったのです。母に尋ねると「ルノワールという画家が描いた絵だ」と教えられました。その年はトイレに入るたびに「ルノワールはどうして私を描いたのだろう?」と不思議に思っていました。
翌年そのカレンダーが剥がされ、絵のタイトルも分からなくなってしまいました。時々思い出して「もう一度見てみたい」と探すのですが、いまだに見つけることができません。
原田マハの『常設展示室』は人生を彩る1枚の絵画を巡る女性たちの思いを描く短編小説集です。この本を読んで、「もっと早くに読んでいたら大学で美術史学を専攻していたかもしれない」と思いました。そうしたら謎のルノワールを解明して人生を彩る絵画にできたような気がするのです。
ニューヨーク近代美術館に勤務していた原田マハの本はどれも、様々な形で美術史の面白さを伝えてくれます。







