
図書館長から とっておきの一冊(3)
2025年度から始まりました、図書館長のおすすめするとっておきの本のご紹介のコーナーです。
図書館長の池⽥三枝⼦先生は国文学がご専門ですが、今回はどんな本が登場するか楽しみです。
図書館の所蔵情報を確認して、ぜひ読んでみてください!
『横しぐれ』/丸谷才一
人生を変えた本
高校入学当時、「将来は源氏物語を研究したい」と思っていたのですが、卒業する頃には万葉集の研究者をめざしていました。長い文章で詳細な内容を記す「散文」よりも、短いことばで深い世界を表現する「韻文」に心ひかれたからです。きっかけは『横しぐれ』という小説でした。
『横しぐれ』の主人公は、亡父が旅先で出会った「乞食坊主」が漂泊の俳人・種田山頭火ではないかと推理して調査を始めます。「乞食坊主」が父と父の友人との会話の中の「横しぐれ」という語に感銘を受けた様子だったという話から、「乞食坊主」が山頭火ならば、「しぐれ」を詠む名句を残した山頭火と父が関わったことになり、父の生涯に花を添えられるという気持ちからでした。ところが調査は父の暗い過去を暴くことに繋がって行くのです……。
ただし、そんなミステリー調のストーリーの妙味もさることながら、私が惹きつけられたのは山頭火の俳句でした。一瞬を/人生を/永遠を切り取る作品に魅了されました。その後、時代を遡って短詩形文学を読み進めるうちに、日本最古の歌集である万葉集に行き着き、今もその魅力を研究をしています。
『横しぐれ』は私にとってまさに人生を変えた一冊です。







