
特集② 向田邦子さん 没後45年を迎えて
昭和を代表する脚本家・作家である向田邦子さんは、2026年で没後45年を迎えました。1981年8月に51歳という若さで急逝した彼女ですが、鋭い人間観察眼から描かれた名作の数々や、凛とした生き方は、令和の現代でも色褪せることなく多くの人々を魅了し続けています。
本学では、実践女子大学渋谷キャンパス120周年記念館の1階に「向田邦子文庫」を設け、向田さんの初版本、旧蔵書、遺品類の一部を展示しています。
没後45年に際し、図書館でもいくつかのトピックスがありましたのでご報告します。
1.「あ・うん」のシノプシスの寄贈と展示の報告
『あ・うん』は、1980年3月9日から3月30日までNHKで放送された、向田邦子脚本のテレビドラマです。昭和初期を舞台に、性格も境遇も対照的でありながら、「あ・うん」の呼吸で神社にたたずむ狛犬のような固い友情で結ばれた戦友同士の二人の男と、その家族、なかでも彼らの狭間で揺れ動く妻のときめきと哀切を描いた名作です。
当時の関係者から、2026年7月に『あ・うん』のガリ版刷りのシノプシスが寄贈されました。関係者によると、このシノプシスは制作初期の段階で、ドラマ枠の確保後にNHK上層部の要請を受けて向田さんが作成した企画書で、物語全体の構成や世界観、主要なあらすじを簡潔にまとめ、制作陣が内容を共有するために配付されたものだといいます。
実際に現物を見ると、本作は当初『こまいぬ』というタイトルで企画され、その後『あ・うん』へ改題されたとされていますが、このシノプシスの表紙には、当初のタイトルが二重線で消された痕跡があり、その経緯を裏付けています。また、配役欄は空白のままとなっており、関係者が鉛筆で俳優名を書き込んだ痕跡も見られます。さらに、誰もが思わず「あ・うん」と改題したくなりそうな記載も確認できるなど、新たな発見に満ちた貴重な資料です。関係者によれば、その構成は向田さんらしく非常によく練られたものだったとのことです。
図書館では、このシノプシスをはじめ、当時のシナリオ4種、映像化資料3点、向田さんによるノベライズー雑誌と書籍、当時の関連雑誌記事を展示する企画展を、オープンキャンパスに合わせて8月2日(日)から10日(月)まで図書館2階で、また9月以降に日時・場所は未定ですが開催し、披露する予定です。
図書館の展示報告の詳細はこちらをご覧ください。
寄贈されたシノプシス
資料展示の様子
2.学外展示への協力
学外では、向田邦子の没後45年を記念して、各種イベントが開催されています。なかでも、大手総合アパレルメーカーである株式会社オンワード樫山が、邦子さんの妹である向田和子氏および株式会社文藝春秋の協力を得て、同社ブランド「uncrave(アンクレイヴ)」の2026年新作発表に合わせて開催した特別展示「uncraveな人=向田邦子」は注目を集めました。
当館もこの展示に協力し、所蔵資料および遺品の一部を貸し出しました。
◆日付、場所
・春夏展示 1月21日(水)~1月24日(土) LA COLLEZIONI 表参道
・春夏展示 4月1日(水)~4月7日(火) 伊勢丹新宿店 本館2階 センターパーク / つながりの場
・春夏展示 5月20日(水)~5月26日(火) 大丸東京店 1F EVENT SPACE
・秋冬展示 6月25日(木)~6月27日(土) ZAspace 代官山
「アンクレイヴ」の新作発表に伴う特別展示は今後も計画されているとのことです。
LA COLLEZIONI 表参道での展示風景
ZAspace 代官山に貸出したエリザベス(左)
3.授業の1コマをお借りしての向田邦子文庫の紹介
6月19日(金)と7月15日(水)の図書館学課程の授業『図書館情報資源概論a』(担当:須賀先生、橋詰先生)の一コマをお借りして、渋谷キャンパス図書館の貴重書庫室、およびそこで保存している資料群の紹介を行いました。貴重書庫室は資料の劣化やカビ、虫害を防ぐために年間を通じて厳密に温湿度管理、また入退室制限が行われています。
授業では、貴重書庫室内で保管している向田邦子関係資料(「著作図書」、「著作文献」、「参考文献」、「(向田さんの)旧蔵書」)の概要を説明し、教員から解説依頼のあった脚本(シナリオ、台本)の説明を行った後、学生には実際にシナリオを手に取って見てもらいました。同じ日に放送されたドラマのシナリオであっても、準備稿、決定稿、完成稿などさまざまなバージョンが存在し、さらにスタッフによる書き込みや差し替え原稿が挟み込まれているものもあるため、撮影現場の裏側をうかがい知ることのできる貴重な資料であることを紹介しました。学生たちは、実際のシナリオに触れることでテレビドラマ制作の過程や作品が完成するまでの流れを具体的に理解し、一次資料が持つ価値や重要性について学ぶ機会となりました。
6月19日 須賀先生の授業での様子
7月15日 橋詰先生の授業での様子
4.やなせたかしさんの向田さんへの献本発見
漫画家のやなせたかしさんと脚本家・小説家の向田邦子さんは、1950年代に出版社(雄鶏社)の同僚として出会った古くからの友人・仕事仲間です。
2025年3月31日から9月26日まで放送されたNHK連続テレビ小説『あんぱん』(第112作)は、国民的アニメ『アンパンマン』の生みの親であるやなせたかしさん夫婦をモデルにしたものですが、劇中に向田さんを彷彿とさせる人物が登場したのが話題になりました。それを見た図書館スタッフが、向田さんの旧蔵書にある やなせさんの著作『やなせ・たかし画集』(サンリオ 1977)を見たところ、やなせさんから向田さんに献本された本だということが分かり、思わぬ大発見でした。
やなせさんの画集
やなせさんから向田さんへの献辞
5.大手新聞社の取材を受けて
全国紙『産経新聞』の大阪版には、書店や図書館等の「本のある場所」を紹介する連載があり、没後45年を迎える向田さんと、本学の「向田邦子文庫」を取り上げる旨の企画が届き、6月末に取材を受けました。
取材では、向田文庫の設立と開設の経緯、収蔵資料数、利用者数、利用者属性、コレクション内容、文庫運営等の質問を受け回答しました。
新聞記事は、2026年8月3日付の『産経新聞』大阪版に掲載されました。
6.向田邦子データベースの拡充
「向田邦子データベース」は、『向田邦子文庫目録』(1987年7月刊)をもとにし、それ以降に入手した、もしくは調査により資料の存在が判明した最新のデータを入力しデータベース化したものです。大きく分けて、「著作図書」、「著作文献」、「参考文献」、「(向田さんの)旧蔵書」、「向田邦子自立語索引」の五本立てになっています。
2026年度の夏休み期間中(8~9月)に、これまで諸般の事情でデータベースに収録していなかった以下の資料の追加を予定しています。
・視聴覚資料 約100点:市販されている向田原作作品の映像資料(VHSビデオ、DVDビデオ)、録音資料(CD,カセット)など
・シナリオ資料 約2,350点:ご遺族や俳優・森繁久彌さんから寄贈されたシナリオ、当館で入手したシナリオ等
これらの資料は、向田作品の保存を前提として収集したものであるため、これまでデータベースへの登録を控えてきました。しかし、職員全員が向田関係資料に精通しているわけではなく、古書カタログ等に掲載される視聴覚資料やシナリオ類については、その都度現物を確認しなければ所蔵の有無が分からない状況が生じています。このことは、資料収集を担当する職員のみならず、研究目的で「向田邦子データベース」を利用する研究者にとっても不便であるため、所蔵資料の情報をデータベースに登録し、検索・確認できる環境整備を行うことにしました。
データ登録と追加を行った暁には、改めて図書館ニュースでご報告します。
向田邦子文庫の利用について
場所:実践女子大学渋谷キャンパス120周年記念館1階プラザ
開室時間:
月~金 10:00~16:00
土 10:00~16:00
※事前予約は不要です。
休室日
日曜、祝日、本学休校日、展示入れ替え期間等
※詳しくは開室カレンダーをご確認ください。
入室料
無料







