【新連載】図書館長から とっておきの一冊
今号から図書館⻑のおすすめする、とっておきの本をご紹介します。
2025年度、図書館長に就任された池⽥三枝⼦先生は国文学がご専門ですが、
様々な分野の本をご紹介いただける予定ですので、今後どのような本が登場するか楽しみです。
図書館の所蔵情報を確認して、ぜひ読んでみてください!
「弟子」/中島敦著
電車で読んではいけない小説
中島敦という作家は、高校の教科書に収録されている「山月記」で有名です。最近ではむしろ「文豪ストレイドッグス」というマンガやアニメの主役・敦君として知られているかもしれません。
「弟子」は、古代中国を舞台に、孔子とその弟子の子路の交情を描く短編小説です。粗暴な子路が、あるきっかけで、儒教の創始者である孔子を師と仰ぐところから始まります。時にはバカげたふるまいをして孔子に叱られながらも、純粋な子路は師匠を一途に慕い、政治的に不遇な孔子の楯となり師匠を守り抜く決意を固めています。一方、孔子もそんな子路のまっすぐな気質を愛します。
最後は……ネタバレになるので申せませんが、私は高校生の時にこの小説を初めて読んで以来、読むたびに必ず泣いてしまうのです。だから決して電車の中では読めません。
漢字が多くて一見むずかしそうなのですが、すぐに引き込まれ、読み進めるうちに、子路のひたむきさと孔子の思いやりに絶対泣けます。
「弟子」は、新潮文庫、中公文庫、文春文庫の『李陵・山月記』に収録されていますが、角川文庫『李陵・山月記・弟子・名人伝』は「文豪ストレイドッグス」の敦君が表紙になっています。