人生100年時代のキャリア支援を考えるセミナーを渋谷キャンパスで開催。深澤教授や学生が活発に議論(7/30)
人生100年時代の到来に合わせ、大学のキャリア支援のあり方を考えるセミナーが7月30日、渋谷キャンパスで開かれました。超高齢化社会が進む中、学び直しを繰り返して職業選択を自由に行い、リタイアすることなく生涯現役で過ごす人が多くなりつつあります。こうした時代の変化に学生に対するキャリア支援をどうするのか。大学の職員のあり様についても一石を投じるセミナーとなりました。
人生は、3ステージからマルチ・ステージに
主催は、自分らしく豊かに生きるためにカギを握る「変身資産」をキーワードに用い独自のメソッドを開発したソーシャルベンチャー「ライフシフト・ジャパン」で、同社取締役CROでライフシフト研究所長の豊田義博さん、有限会社ポンタオフィス代表取締役で、キャリア・ソリューショニストの本田勝裕さんらが参加しました。
豊田さんによると、人生のステージは、これまでは年齢を重ねていく間に、「教育」「仕事」を経て「引退」する変化の少ない過程(3ステージ)をたどる人生が典型的でした。
ところが、人生100年時代は、学校教育を受けた後も、学び直しを経るなどして、職業は会社員や起業家、フリーランスと形を変えていくほか、副業やNPOなども兼ねることもあり、生涯現役のまま長く変化の多い人生(マルチ・ステージ)を送るのがトレンド。さらに、働くだけでなく、遊びや学びも深め、充実した「ライフシフト」の旅を送る時代になるということです。
生涯現役に求められる「変身資産」を見つめ直す
そこで大切になってくるのが、変化に対して開かれた姿勢を持っているかや、多様なネットワークを持っているかなどを示す「変身資産」という人それぞれが持つ無形の財産です。変身資産は人生の中で培われるもので、数値化したのが「変身資産アセスメント」と呼ばれ、日ごろのものの考え方や行動、これまでの経験などに関し、計200問の質問に答えて分析し、プログラムの中で、自己を見つめ直して変身資産を増やしていきます。今回のセミナーでは、プログラムを受けた学生の声が紹介され、「対話を通して一人では気づけなかったことを気づくことができてよかった」「(プログラムを通して)自分のモチベーションや楽しい生活を理解できたので、自分らしい人生を送っていけると思う」などと前向きな意見が寄せられました。
ライフシフト・ジャパンが主催する学生向けのワークショップに参加した文学部英文学科2年の小島知華さんは、ライフシフトパートナー(専門家)と一対一で対話したことについて「自分自身について発表して、内省することが人生において大切だなということが実感できた」などと話し、変化に前向きな内面の気持ちを示す10項目の「心のアクセル」の数値が大幅アップしたということです。
深澤教授「学びはウェルビーイングそのもの」「キャリア支援する職員の振り返りも大切」
このアセスメントの有効性を認めている一人が、本学の深澤晶久文学部教授です。深澤教授は「200の質問に回答して自分自身とゆっくり向き合う時間が大事」と強調。「私は15年、キャリア教育に携わってきたが、キャリア教育=就活と狭義の意味でとらえられてきた。しかし、人生100年時代は、何歳になっても常に学ぶことを繰り返すことが求められてきている。その中で、大学の職員自身のキャリアをどう考えるかも今回のテーマで、職員自身がキャリアを振り返りながら、世代を超えて学生に伝えることで本質的なキャリア支援につながるのではないか」と提言しました。さらに、深澤教授は「受験勉強はつらいことだが、興味関心があることを自ら進んで学んでいくことは、(人とつながり、人生に意味を見出し、肉体的、精神的、社会的に満たされた状態を示す)ウェルビーイングそのものだ。学びが豊かな時間を作り、人生に財産になってくる」と締めくくりました。セミナーに参加した職員らからは「今回の話を聞いて、改めて自分自身のライフシフトを考えていかなければならないと思った。それが学生のキャリア支援で共感されたり、現実味があって想像しやすくるなるのではないか」などの発言がありました。
小島知華さんのコメント
昨年5月にプログラムを受けました。その中で名前の書いていないアセスメント結果をもとに、その人の人物像を話してもらう「うわさ話」というグループワークがありました。他者から見た自分というものを知る機会は少ないと思うが、それがいい機会となって内省できるようになりました。私の場合、大学受験が描いたように行かなかったことが、自分自身について考えるきっかけになりました。プログラムにある(一対一で対話する)ワン・オン・ワンで自分について発表することが増え、内省力というものが人生においても大切だなと実感できました。公認学生コミュニティを目指し考えていることとして、今後は、ライフシフト・ジャパンのプログラムと同じようなものを使って、高校生向けのサマースクールや合宿型のワークショップを開催したいと思います。
深澤晶久教授のコメント
ライフシフト・ジャパンさんが開発したライフシフトジャーニーというプログラムを受講させていただき、ライフシフトパートナー1期生に認定いただきました。その中で、キャリア教育の授業を受けていた本学学生にも、プログラムを受けていただきました。もともと、社会人のためのプログラムですが、人生100年時代にウェルビーイングな人生を過ごしていくためには、大学生の時から考えていくことが重要なのではないかと思い、広めています。そして、大学の職員が自分自身のキャリアを振り返ることで、学生に対してキャリア支援をする時、単にどんな会社に入るかということでなく、もっと広く人生を考え、職員、学生が互いに分かり合える本質的なキャリア支援になると考えます。