実践女子大学食生活科学科×日本相撲協会 「オリジナルちゃんこプロジェクト」の試食会に竹縄親方が来校。学生が考案した豆乳入り、カレー風に「工夫が詰まった優しい味」と高評価。(9/3)
生活科学部食生活科学科健康栄養専攻(2026年4月から食科学部食科学科健康栄養専攻)の学生2人と公益財団法人日本相撲協会(以下「日本相撲協会」)が連携して進める「オリジナルちゃんこプロジェクト」の試食会が9月3日、本学の日野キャンパスで実施されました。当日は、日本相撲協会から、春日野部屋所属の竹縄親方(元栃乃洋関)が来校し、学生2人が考案した「ピリ辛豆乳ちゃんこ」と「和風カレーちゃんこ」を試食。「どちらもおいしく、甲乙つけがたい」「2人の工夫が詰まった優しい味」と高評価する声が上がりました。今後は、本場所での販売を目指して調整を進めていく予定です。
笑顔の参加者
今年度初めてスタートした「オリジナルちゃんこプロジェクト」

本学は、2017年に日本相撲協会と包括連携協定を締結。これまでもコラボグッズの開発や両国国技館での販売ボランティアなど、全学挙げて産学連携の取り組みを行ってきました。今年度はさらに、「オリジナルちゃんこプロジェクト」という新たな企画がスタート。これは、相撲を支える「食」と「文化」への理解を深め、日ごろの学内での学びを実践すべく、学生自身がちゃんこ料理を開発し、両国国技館の大相撲観戦に訪れるお客様への販売を目指すというもので、健康栄養専攻4年の大谷眞未さんと西﨑彩可さんの2人がプロジェクトへの参加を決めました。「栄養士資格取得課程での学びを実践し、多くの人に『食』を通して相撲の魅力を伝えたい」という2人は、日本相撲協会との産学連携活動の一環として設立された学内公認団体の「JJ相撲クラブ」のメンバーでもあります。
プロジェクトを進めるにあたり、大谷さんと西﨑さんの2人は、まず東京都墨田区に拠点を構える春日野部屋を訪れ、朝稽古とちゃんこを調理する様子を見学。春日野部屋のちゃんこの味を自分たちの舌で確かめ、力士の実際の食生活を目の当たりにしました。
別の日には東京・両国国技館を訪問。国技館で相撲土産の製造・販売を行い、国技館内の施設運営を手掛ける国技館サービス株式会社(以下、国技館サービス)のサービス部長、料理長とのミーティングに臨みました。また、本場所中に販売されている「国技館ちゃんこ」の調理場や販売場所も見学し、実際に「国技館ちゃんこ」を試食しました。
その後2人は、「1日最大約2,000食」「1鍋で100人前」「販売価格は500円(税込)」「肉類以外の具材は固定(キャベツ、大根、人参、しめじ、えのき、糸こんにゃく、油揚げ、ニラ)」「少ない調理工数」といった前提条件のもと、本格的にレシピの開発に着手。日ごろ学んでいる栄養学の知識を生かしながら試行錯誤し、自宅での試作と4回にわたる学内での試食会を重ね、レシピをブラッシュアップさせていきました。
そして、迎えた竹縄親方らの試食会。レシピ考案の経緯やこだわりのポイント、栄養価などを説明するプレゼンテーションを行った後、竹縄親方に、「ピリ辛豆乳ちゃんこ」と「和風カレーちゃんこ」を試食してもらいました。
すりごまの香りと豆乳のまろやかさ、アクセントのラー油がポイント!「ピリ辛豆乳ちゃんこ」

大谷さんが開発したのは、「ピリ辛豆乳ちゃんこ」。具材は指定の野菜類と鶏もも肉です。味付けは、無調整豆乳とすりごま、ラー油、鶏がらダシ、和風ダシ、塩。すりごまの豊かな香りと豆乳のまろやかな味わいに、アクセントとしてラー油を効かせ、高タンパク・低脂質が売りの一品です。「両国国技館でちゃんこの提供に使われている黒い器との見た目の相性も良く、体を温める効果があります。「すりごまと豆乳の最適なバランスや、風味を最大限に生かすための豆乳投入のタイミングを工夫し、豆乳の凝固を避けるための微調整にも苦労した」と話しました。
「ピリ辛豆乳ちゃんこ」を試食した竹縄親方からは、「きちんとすりごまの香りがするし、豆乳の味も感じられる」と高い評価を受けました。
食べ応え十分! 程良いスパイス感で大人から子どもまで楽しめる「和風カレーちゃんこ」

西﨑さんが手掛けたのは、豚バラ肉とカレーの組み合わせ、食べ応えも十分な「和風カレーちゃんこ」。豚バラ肉のうま味とカレーのスパイシーさが食欲をそそるちゃんこです。ネーミングから想像するよりもさらっと後味の軽い仕上がりで、子どもや辛いものが苦手な人でも食べられる優しく程良いスパイス感が特徴。カレールーではなくカレー粉を使用することで、スパイス本来の香りや風味を生かす工夫が施されています。「ピリ辛豆乳ちゃんこ」同様、内側から体が温まる冬の時期にふさわしい一品に仕上げました。西﨑さんいわく、「カレー味は幅広い世代に人気があり、横綱・大の里関もカレー好きと聞いています。外国人観光客にも受け入れていただけると思います」とのこと。
竹縄親方からは、「辛さやスパイス感が絶妙で、幅広い層に食べてもらえる」と、こちらも高評価をいただきました。
試食後は、実売に向けた課題も検討

試食後は、竹縄親方から改めて講評をいただきました。「どちらもおいしく、甲乙つけがたい」とちゃんこの味については好評でしたが、国技館サービスでの調理が可能かどうか確かめる必要があり、学生と竹縄親方で確認事項を整理しました。
また、「ピリ辛豆乳ちゃんこ」「和風カレーちゃんこ」のどちらか一つを販売するのか、本場所中の期間を区切って交互に販売するのか、販売方法を検討すべきとの認識も共有しました。
生活科学部食生活科学科健康栄養専攻4年 大谷眞未さんと西﨑彩可さんのコメント

「オリジナルちゃんこプロジェクト」という企画を知り、「相撲」と「食」を同時に現場で体験できる貴重なチャンスだと思い手を挙げました。もともと、JJ相撲クラブのメンバーとして両国国技館でのボランティアに参加する相撲ファンでもあるので、自分たちが学んでいる栄養学の知識を生かし、相撲と食文化の発展に寄与できたらと考えました。
レシピの開発で難しかったのは、食材や調理工程、原材料費などさまざまな条件をクリアすること。両国国技館や春日野部屋の見学の後にミーティングを重ねた上でアイデアを出し、実際に自宅で試作を行った結果、「ピリ辛豆乳ちゃんこ」と「和風カレーちゃんこ」にたどり着きました。
いずれのレシピも、学内で試食会を実施し、その際のアンケート結果を基にしながら調整を加えていきました。「ピリ辛豆乳ちゃんこ」は、豆乳の風味を殺さないすりごまの量を調整するのに最も苦労し、コクを出すために肉の種類も鶏つくねから鶏もも肉に変更するなどしてブラッシュアップを図りました。「和風カレーちゃんこ」については加熱した時の肉の柔らかさを重視し、豚こま肉から豚バラ肉に変更して食べやすさとおいしさを追求。子どもから辛いものが苦手な方まで、あらゆる方々に楽しんでいただけるスパイスのバランスを見つけ出すことに力を注ぎました。
試食会までの道のりは平坦ではありませんでしたが、試食いただいた竹縄親方に「おいしい」と言っていただけて本当にうれしく思います。今後は、実際に国技館サービスの方にこのレシピの味を確実に再現していただけるよう、調理手順を整理して資料を整え、本場所での販売に向けた具体的な準備を進めていきたいと思っています。
竹縄親方のコメント

「ピリ辛豆乳ちゃんこ」「和風カレーちゃんこ」ともに、学生2人の工夫が詰まった優しい味で、とてもおいしかったです。お年寄りからお子さん、さらには外国人の方まで、幅広い層のお客様を考慮して試行錯誤を重ねた末にたどり着いた味に、大変感銘を受けました。
「ピリ辛豆乳ちゃんこ」は、豆乳の風味がしっかりと感じられました。加熱によって豆乳が凝固しないよう、また、豆乳とすりごまがうまく調和するよう工夫したと説明されていましたが、その努力が味からもうかがえました。
「和風カレーちゃんこ」は、想像以上にカレーのスパイス感がしっかり出ていて、それでいて辛すぎない味付けが絶妙でした。これならあらゆる年代、辛いものが苦手な方にも召し上がっていただけると感じました。
相撲部屋のちゃんこは汗をかいた力士向けに作るので、ご家庭よりもやや濃いめの味付けが一般的ですが、今回ご提案いただいた2種類のちゃんこは、万人受けする濃すぎない味付けに仕上がっているのも良かったです。ちゃんこという料理そのものだけでなく、「両国国技館でちゃんこを食べた」という体験をお客さまに提供したいと考えていますので、幅広い層に受け入れられる味付けは、今回のプロジェクトの目的にかなっていると感じました。
今後は本場所での販売を目指し、実現可能性を確認するステップへと進んでいきます。どうぞご期待ください。