実践女子大学×南多摩保健所×京王ストアコラボ企画 管理栄養士専攻の学生が減塩レシピを開発、啓発ツールを展開しました!
食生活科学科管理栄養士専攻の学生が、東京都南多摩保健所、株式会社京王ストアと連携し、減塩レシピを開発。9月16日から1カ月間、京王ストアの都内4店舗で、レシピカードや減塩を呼びかけるデジタルサイネージ動画、商品棚に設置する帯カード、リーフレットの4種類の啓発ツールを初めて展開しました。特に、リーフレットは、手に取る利用客も多く、想定を上回る大幅な配布となりました。
実際に調理され、売り場に展示されたグリルドチキン
国民の健康づくりの重点課題「減塩」の普及啓発を目指して、産学官が連携。想定を上回る反響に手ごたえ。
産学官の三者連携は、国民の健康づくりの重点課題である「減塩」の普及啓発を進めるため、日野市、多摩市、稲城市の3市を所管する南多摩保健所が主催する「栄養・食環境地域ネットワーク会議」の取り組みの一環として行われました。多摩センター店(東京都多摩市)、桜ケ丘店(同)、稲城店(東京都稲城市)、高幡店(東京都日野市)の3市4店の実店舗で掲示や配布をすることで、より多くの来店客の目に止まり、普及啓発が効果的に行われることを期待しての取り組みです。レシピ開発などは、食生活科学科の5人の教員の指導の下、管理栄養士専攻の1年生から4年生の総勢22人が実施しました。
学生らしい感性が光る制作物が、利用客の心をつかむ!
学生たちは、大学で学んだ専門知識と学生らしい自由な発想を組み合わせ、チームで分担して、次の4種類のツールを制作しました。
【レシピカード】
「手軽に減塩、見直す生活」というキャッチコピーのもと、「フライパンで焼くだけ!野菜たっぷりグリルドチキン」(主菜)、「手作りカッテージチーズとトマトのカプレーゼ」(副菜)、「豚しゃぶと野菜のごまだれつけうどん」(麺類)の3種類の減塩レシピを開発。レシピカードに掲載する料理写真も学生が撮影しました。
ラックに並んだレシピカード
レシピカードの撮影に取り組む
【デジタルサイネージ動画】
デジタルサイネージで流れる動画
まずは減塩に興味を持ってもらえるよう、減塩を啓発する親しみやすい動画を作成。わずか15秒の間に「健康的な生活を送ることができます」、「いつものお買い物から減塩にチャレンジ!」などの印象的な言葉をつけて利用客の注目を集めました。
【帯カード(POP)】
チューブ商品の陳列棚には帯カードを掲示
細かく設定したターゲット客に合った内容とデザインの帯カードを数種類準備し、ターゲット客が手に取りそうな商品が置かれている棚に掲示。「我慢しない減塩」、「手をかけずに気を遣う」、「チューブひとつで減塩習慣」などわかりやすい言葉を使ったのが特徴です。
【リーフレット】
見やすい仕様となったリーフレット
無理なく日常的に続けられる減塩のコツを、大きな文字で見やすく紹介。薬味や香辛料を効かせる、酸味を効かせる、食材本来の味を楽しむ、使用量を減らすために容器の工夫をする、といった減塩のコツ4選も掲載しました。
いずれのツールも、学生ならではのフレッシュな感性が光る仕上がりで、地域の方々の減塩への関心を高めることに貢献しました。特に、リーフレットは想定を大幅に上回る配布枚数を記録しました。今後は、今回の取り組みが各店舗の減塩関連商品の販売にどのように結びついたかデータ検証を行い、その効果を測定する予定です。
参加学生のコメント
「やりがいを実感した」と話す学生
今回のプロジェクトには1年生を中心に、全学年から総勢22人が参加しました。私たち2人は4年生で、「大学生活の最後に、何か大きな経験を積みたい」「将来食品メーカーに就職するにあたり、企業ではなく管理栄養士を目指して学ぶ学生の視点で、地域の課題に取り組んでみたい」という思いがそれぞれにあり、参加を決めました。
活動は、レシピカードチーム、デジタルサイネージ・帯カードチーム、リーフレットチームに分かれて行いました。レシピカードチームは、まずメンバーそれぞれが下調べをし、実際に試作をしたうえで、主菜、副菜、麺類の3種類の減塩レシピを開発することに決めました。減塩の物足りなさをどう解消するかが最大の課題で、塩味を左右する水分の調整や、「誰でも簡単に作れる」を実現することにも苦労しましたが、自分たちが作ったレシピによって、減塩料理に挑戦してくれる人が増えることを願って取り組みました。
デジタルサイネージ・帯カードチームは、授業で学んだ「行動変容ステージ」の考え方をもとに「誰に届けたいか」というターゲットを明確にして、制作を進めました。デジタルサイネージ動画は「減塩にまったく興味がない人」、帯カードは「減塩に興味はあるがどんな商品を買えば良いかわからない人」をそれぞれターゲットに設定しました。年代は、デジタルサイネージ動画は、食塩摂取量が多いとされる40代から50代を意識し、帯カードは「普段から料理をする女性(家族がいる方)」と「一人暮らしで自炊をしない男性」とし、ターゲットを分けました。どの商品のそばに置くか、カードの内容や絵柄もターゲットに合わせて工夫し、効果の最大化を狙いました。
リーフレットチームは1年生主体で進め、管理栄養士専攻の必修科目である「栄養教育論実習」等でリーフレットの作成経験がある3,4年生が助言役を務めました。「現実的で無理なく続けられる内容にすること」を心がけ、文字を大きくして見やすさにも配慮。その結果、リーフレットの配布枚数は当初の予定を大幅に超え、増刷を繰り返すほどの人気ぶりとなりました。
今回のプロジェクトを通して、大学で学んだ専門知識を、一般の方に「簡単で手軽に挑戦してもらえる」形に落とし込むことの難しさと、やりがいを実感しました。「伝える力」の価値や、チームで協力し目標を達成する重要性も学んだので、この貴重な経験を今後社会で生かしていきたいです。
(生活科学部食生活学科管理栄養士専攻4年 石川怜奈さん、五嶋玲花さん)
京王ストア営業企画部販売促進担当課長 庄司明美氏のコメント
学生の皆さんが一生懸命考えてくださったレシピを、スーパーの売場で形にできたことを大変光栄に感じています。社内でも地域連携の意義を強く認識しており、少しでも記憶に残るプロジェクトにしたい、学生の皆さんの真剣な思いに応えたいという気持ちで協力させていただきました。
減塩商品は爆発的に売れるものではありませんが、健康を意識されるお客さまにとっては確かなニーズがあります。ビジネスとして大きく展開することは容易ではありませんが、お客さまが店舗を訪れた際、「こんなのもあるんだ」と足を止めて見てくださるだけでも、大きな意味があると考えています。
保健所や大学との連携は当社にとって今回が初めての試みでしたが、これを機に当社でも、永遠の課題である「減塩」への取り組みを継続してまいります。
生活科学部食生活科学科 辛島順子准教授のコメント
「学生の成長の機会を増やしていきたい」と強調する辛島准教授
私が座長を務める「栄養・食環境地域ネットワーク会議」の取り組みの一環として、南多摩保健所、京王ストアと協力し、減塩の啓発活動を展開することになりました。
レシピ開発においては、目で見ることができない味(食塩量)を扱う「減塩」というテーマならではの難しさがありました。しかしながら学生たちは、豚肉のゆで汁でうま味を足したり、香辛料を使ったりといった工夫で、その課題を乗り越えてくれました。1年生が多く参加していたため、従来の固定観念にとらわれない柔軟な発想が生かされていたと思います。また、料理の盛り付けのセンスの良さにも驚かされました。レシピカードに載せる料理写真も学生が撮影。写真部の経験がある学生の活躍もあり、まるで料理雑誌に出てくるような仕上がりに感銘を受けました。
デジタルサイネージ動画の制作においても、動画編集の経験がある学生や、デザインに強い学生が中心となり、非常に完成度の高いものに仕上げてくれました。京王ストアの担当者からも高い評価をいただけたのは、学生たちの自然で親しみやすい表現が、お客さまの心に響いたからだと感じています。
帯カードは「行動変容ステージ」の考え方を活用していた点を評価します。ワーディングも絶妙で、減塩への興味レベルやライフスタイルによってターゲットを細かく分けて内容やデザインに変化を付けたことで、効果的な啓発ツールとなりました。
リーフレットは、学生たちの強い要望により制作したものです。配布から数日で初回納品分がすべてなくなるほど反響があったのは、情報を極力そぎ落としたシンプルな構成が、お客さまの関心を引いたからではないかと分析しています。
今回のプロジェクトの最大の成果は、何といっても学生たちの成長でしょう。教員からはあえて細かい指示はせず、管理栄養士を目指す学生に必要な知識を伝えるにとどめたところ、学生たちは期待以上の主体性を見せてくれました。自分の考えをしっかり持って取り組み、周囲の意見に耳を傾ける柔軟性も発揮。管理栄養士に必要な「しなやかさ」を、また一つ習得したのではないでしょうか。管理栄養士専攻は国家資格を目指す専門性の高い専攻であり、地域の課題に合った提案もできることを、学生自身、身をもって学んだことと思います。
また、産学官の連携事業の強みを再確認できたことも一つの成果だと感じました。私たち大学は専門知識を提供し、企業や自治体はフィールドを提供する。その中で生まれる学生たちの自由で斬新なアイデアは、私たち教員が考える以上に地域社会に良い効果をもたらすのだと、改めて気付かされました。
なお、今回の取り組みは、本学の「教育プロジェクト」に位置づけており、学生たちは活動に必要な交通費の補助や学外活動時には学生保険の適用を受けています。本学は、学生が安心して学外活動に取り組むことができる環境を整え、活動を支援しています。今後もこのような制度をうまく活用し、事務職員の方々の力もお借りしながら、学生の成長機会を増やしていきたいと考えています。







