家族社会学ゼミ(笠原ゼミ)が、岩手県の夏合宿 でフィールドワーク。その成果を常磐祭のパネル展示で紹介しました!
日野キャンパスで11月8日、9日に開催された常磐祭で、生活科学部現代生活学科の家族社会学ゼミ(以下、笠原ゼミ)が、夏のゼミ合宿の成果をパネル展示で紹介しました。昨年度に続き、岩手大学農学部と釜石市根浜・箱崎の市民の協力を仰ぎ、ゼミ生は積極的にフィールドワーク。その成果をパネルで紹介して、多くの来場者に見学してもらいました 。
常磐祭の展示を前にゼミ生同士で意見を交わす
岩手の気候や地理、産業、地方社会の現状に触れた3日間
「家族」という、社会の影響を受けつつ社会にも影響を与える重要な集団に焦点を当て、現代家族が直面する諸問題の要因と解決策をライフコースの視点から探究している笠原ゼミ。今年度の夏合宿は「避暑!!自然のなかで生活感覚を研ぎ澄ます」をテーマに、8月3日~5日の2泊3日の日程で岩手県を訪問。しかし、岩手も東京と同じくらいの猛暑で「避暑」とはいきませんでしたが、緑豊かな大自然のなかで、学生は積極的にフィールドワークに取り組みました。
深い森の中に今なお立ち並ぶ松尾銅山の廃墟となった集合住宅
滝沢演習林を視察
初日は、岩手大学農学部の山本信次教授と髙田乃倫予助教の協力のもと、岩手県内の植生や人と自然の共生について座学で学んだ後、同大学附属の寒冷フィールドサイエンス教育研究センター滝沢演習林を視察し、林業や自然環境への理解を深めました。かつては“雲上の楽園”と呼ばれた八幡平市松尾鉱山の跡地では、当時の生活記録を資料館で確認し、現存する集合住宅跡で時代と家族の変遷を実感。八幡平登山にも挑戦しました。
東日本大震災津波伝承館から三陸の海を臨む
2日目は沿岸部へ移動し、陸前高田市の「東日本大震災津波伝承館 いわてTSUNAMIメモリアル」、東日本大震災の記憶の伝承と地域交流を促進する複合的な観光・防災拠点施設である釜石市の「うのすまい・トモス」を見学。津波の脅威と人々の復興の歩みについて知見を広げました。さらに、釜石鵜住居復興スタジアムにも立ち寄り、防災教育の重要性を再認識。その夜の宿泊先・釜石市内の民宿では、地元市民へのインタビューを通じて地域の暮らしや文化を体感しました。
地元の漁師さんと交流し、漁船乗船
最終日は、釜石市箱崎の箱崎漁港へ。地元の漁師さんにお世話になって、漁船乗船体験 やウニの殻むき、 菜園訪問などを通して地域ならではの生活を学びました。午後には箱崎町の市民の皆さんへのグループインタビューも行い、地域の生活や漁業、製鉄業について貴重なお話を伺いました。
3日間の学びを振り返り、わかりやすくパネルで紹介
常磐祭で展示された笠原ゼミのパネル
ゼミ生たちは、「夏合宿での充実したプログラムと、そこで得た学びを多くの人に伝えたい」との思いから、常磐祭でのパネル展示に臨みました。心理学の授業で培った知識を生かしてフォント選びや配色を工夫し、合宿中の学びを象徴する写真を厳選。学びを振り返りながら、自らの経験を言語化してパネルにまとめました。充実した内容を引き立てる、海や山の清涼感をイメージした爽やかなデザインも印象的で、来場者の関心を引き付けていました。
今後は、合宿やパネル制作で得た知見をもとに、それぞれのゼミ生が考える「家族×生活」を図像(版画・イラストなど)と文章のセットで表現する「現代版 版画文集」の作成を進めています(町田市立国際版画美術館との協同)。自身の関心を明確にして、卒業論文研究のテーマ選定につなげていく予定です。
ゼミ生のコメント
ゼミ生を代表して合宿プログラムの説明をする学生
・初めて本格的なインタビューに挑戦し、貴重な経験となった。共感できる意見もあれば、自分とは異なる考え方もあり、多様な価値観に触れたことで視野が広がった。
・中学1年時に福島で東日本大震災を経験。自宅は倒壊を免れたが、当時の記憶は今も鮮明に残っている。今回の被災地訪問を通して、被害に遭った方々の苦労を実感すると同時に、深い悲しみを乗り越えて生きる人々の強さを感じた。
・政治家が考える復興と被災者が望む復興との間に隔たりがあることを知り、「誰のための復興か」という視点で政治を考える重要性を学んだ。
・林業や漁業など第一次産業に携わる人々の働き方に触れ、労働観の多様性や地域・時代による違いに興味を持ち、研究してみたいと思った。
・これまで就職活動の軸が定まっていなかったが、地域活性化に貢献する仕事にも関心を持つようになり、進路の選択肢が広がった。
生活科学部生活文化学科 笠原良太専任講師のコメント
インタビューに答える笠原良太専任講師
今回の夏合宿は、岩手大学が提供するプログラムに、釜石市根浜・箱崎の人びとのお話をうかがう 独自の行程を組み合わせたものです。東京にいては気づきにくい「生活と自然・産業・地域とのかかわり」を、五感をとおして理解することが目的です。ゼミ生同士が寝食を共にし、互いの新たな一面に触れたことで、これまで以上に活発な議論が生まれました。
また、現地の方々への本格的なインタビューを実施し、教室では得られない実践的な学びの機会となりました。戦後から現在までという長い期間にわたる濃密な内容のインタビューであったため、準備が不足していましたが、学生たちは積極的に取り組んでくれました。今回の経験・反省を来年に活かしたいと思います。
パネル制作では、授業で学んだ知識を生かしながら色使いや表現に工夫を凝らし、現地の空気感を伝えるために写真選びにもこだわっていました。とくに、八幡平の緑深い壮大な自然と、松尾鉱山跡地の重厚な雰囲気のコントラストをうまく表現してくれました。
今回の合宿・フィールドワークとパネル制作をとおして、学生たちは確実に視野を広げ、想像力を豊かにしています。今後も現場での学び、人との出会いを大切にしながら、生活を科学していきたいと思います。







