人間社会学部の角本ゼミの学生たちが能登半島の七尾市の観光支援として、観光パンフレットと動画を作成しました!
2024年1月に発生した能登半島地震で被災した石川県七尾市を支援するため、人間社会学部の角本伸晃教授のゼミ生8人が7月に現地入りして調査。観光パンフレットや4種類のPR動画を作成しました。復興の遅れや風評被害で観光客が減少する温泉地に若い世代の人たちの目を向けさせるため、同世代の学生が支援策を考える試み。プロジェクトを通して学生たちは、被災地への思いや平穏な日常の尊さを新たにしました。
旅を満喫できる能登里山里海ミュージアム
若い世代の誘致がカギ。被災地の社会テーマに有志学生を派遣
美湾荘前で集合写真
七尾市は、能登半島のほぼ中央に位置する街で開湯1200年の歴史を持つ「和倉温泉」が有名です。日本でも珍しい海から湧き出す「海の温泉」として名高く、その美しい景観のみならず、豊富な湯量と泉質で高い人気を誇っていました。
しかし、震災の被害で、和倉温泉旅館協同組合に加盟している全旅館が休業を余儀なくされ、現在も復旧工事の最中にあり、営業を再開できた旅館は半数にも満たない状況です。
角本教授(地域経済学・観光経済学)は「能登半島地震では、物理的被害だけでなく、風評被害によって被災していない地域も観光客が減少し、北陸全体に広がっている」としたうえで、「能登半島の復興には観光地に若い世代を誘致することが重要」と指摘します。地震大国ニッポンで、震災復興と風評への視点は大きな社会テーマです。このため、角本ゼミでは、ゼミのフィールドワークの一環として、能登半島の七尾市に有志学生を派遣し、1泊2日で現地の観光スポットを取材・調査し、同世代の若者を呼び込むための観光パンフレット作りなどに挑みました。
プロジェクトリーダーの北條 凛さん「予想以上に復興が遅れていていた」
取材を受ける北條さん
「まだ復旧工事中のところも多く、予想以上に復興が遅れていていました」。当時の驚きをこう話すのは、プロジェクトリーダーの北條凛さん(人間社会学部 現代社会学科3年生)です。
市の中心部はだいぶ整ってきたものの、郊外は道が崩れて通行止めのまま。年間4万人いた観光客も現在は5千人ほどです。「東京にいると、最近はあまり能登の状況は報道されないので、もうすっかり復興していると思っていただけにショックでした。ある意味、東京の人たちがもう復興していると誤解して気にも留めなくなってしまっていること自体が風評被害みたいな感じです」。当時を思い返すと、北條さんの気持ちも沈みがち。地元の人たちと接するにあたり、ゼミ生は自分たちが快く受け入れてもらえるか不安がよぎりました。「初めての土地だったので、その土地の文化や価値観、地震の被害についてどこまで踏み込んで話を聞いて良いのかわからず、失礼にならないようにと考え、対応が難しかったです」とも話しました。
しかし、そんな気苦労は活動に入るとすぐに解消されました。街に観光客がまったくいないため、大学生グループが歩いているだけでも目立ち、地元の人たちに「どこから来たの?」と声をかけられることもしばしば。地元の温泉に入った際にも声をかけられ、「東京から来た大学生です」と答えると、「え?なんで来てくれたの?」と驚かれました。「ゼミの研究で観光誘致のお手伝いにきました」と答えると、とても歓迎してくれました。
若い視点でセレクト。新スポットも紹介
イルカショーも見れるのとじま水族館
パンフレットはA5サイズで表裏の表紙を含め、フルカラーの計12ページ。表紙には「今、訪れたい 七尾市特集」などと記されています。作成は夏休みに行われたため、主にLINEのグループ通話などリモートでの作業となり、「統一感を出すのに苦労した」と北條さんは振り返ります。内容は、「能登里山里海ミュージアム」「のとじま水族館」「和倉温泉総湯」(日帰り施設)」「湯っ足りパーク(足湯)」「渡月橋」「食祭市場」など定番スポットのほか、「七福神巡り」や「七尾グルメ旅」といった学生独自の企画コースも紹介され、小さなパンフレットながらも、若い視点でセレクトされた充実の内容です。これらはすべて学生が現地で交渉し、許可取りをしました。
「七福神巡り」の中には、「湯元の広場」にある和倉温泉の開湯伝説にちなんだシラサギの像のある「涌浦乃湯壷(わくうらのゆつぼ)」での温泉卵づくりなども紹介しています。紹介にあたっては「写真や文字だけでは伝わらない良さを伝えるには動画が最適」と、同世代に馴染みのある動画コンテンツが各所別に作られ、パンフレットのQRコードから動画を視聴できるようにしました。
「七尾グルメ旅」には、能登の海鮮や能登牛など地元の食材を楽しめるお店を掲載。それらは学生たちがインスタグラムで調べたり、現地で見つけたお店です。
「今ある能登や七尾市の良さを理解して、愛してくれる人たちに来て欲しい」
完成したパンフレットを手に
罹災の困難に「0からスタートできる機会」と前向きに立ち向かっているのは、200年以上の伝統を誇る歴史ある宿「美湾荘」の若女将です。当時、地震によって一般営業できない中でも、工事関係者やボランティアの人たちを受け入れてきました。東京に帰る日の朝、若女将の話を聴く機会を得ました。「当時の状況や被害の様子について想像していた以上に詳細に話してくれ、改めて被害の大きさを実感しました」と北條さんは話します。激減した観光客対策については「インバウンドのように、単に観光客数を増やすために街を変えるのではなく、今ある能登や七尾市の良さを理解し愛してくれる人に何度も来てほしい」と若女将が話し、初めは「映え」を意識していたパンフレットを考えていた学生たちは、「今ある七尾市の良さを伝える」という考えに至ったとのことです。北條さんは、このプロジェクトがきっかけで「当たり前の日常の尊さ」を実感し「将来は人びとの日常を支える仕事に就きたい」と語ってくれました。
完成したパンフレットは500部印刷され、七尾市役所や和倉温泉観光協会、美湾荘などに置かれています。
パンフレット掲載の動画コンテンツ
常磐祭で支援のために販売された能登の米粉を使ったドーナツ
常磐祭での角本ゼミのブース







