地域・生活文化ゼミ(須賀ゼミ)の「布川ファーマーズマーケット」にタイガー魔法瓶が初めて協力。連携の輪がさらに広がりました(12/1)
生活科学部現代生活学科の地域・生活文化ゼミ(以下、須賀ゼミ)と親交を深める布川(新潟県十日町市松之山布川地区)の野菜や新米を販売する「布川ファーマーズマーケット」が2024年12月1日、日野市のコミュニティーセンター「カワセミハウス」で開催されました。今回は、大手家電メーカーのタイガー魔法瓶株式会社(本社・大阪府)の話題の直火用炊飯器を初めて使い、学生が布川の人たちと一緒に作った新米が炊かれ、市民らに試食で提供されました。炊飯用の燃料は、古紙の有効活用を目指す日本紙通商株式会社(日本製紙グループ/本社・東京都)が取り組むリサイクルのために回収した牛乳の紙パックなどを使用し、非常時用としても活用できることを実演しました。学生が懸け橋となって地域の人やモノをつなぎ、持続可能な社会の構築を試みる活動は、さらに、異業種の企業が加わり、広がりを見せています。
調理場でけんちん汁の仕込みをする学生たち
今人気の炊飯器の開発者が訪れ、「まつむすめ」の新米の炊き立てを試食で提供

「上手に炊くコツは、はじめちょろちょろ なかぱっぱです」。カワセミハウスの庭に置かれた炊飯器(「商品名・魔法のかまどごはん」)6台を前に、開発者でタイガー魔法瓶株式会社の村田勝則さんが、おいしく炊くコツを学生らにやさしくアドバイスしました。炊飯器は、電気を使わず、新聞紙や牛乳の紙パックだけでおいしくごはんを炊くことができるのが特徴で、キャンプ用や防災用に使える商品です。能登半島地震で防災への備えに関心が集まる中、この炊飯器はヒット商品を顕彰する日経トレンディの「2024ヒット商品ベスト30」と、2024年のグッドフォーカス賞(グッドデザイン賞)に選ばれました。
電気を使わず、燃料は、リサイクル用の牛乳パックや新聞紙を使用
午後からの布川ファーマーズマーケットのスタートに備え、午前中から7人の学生たちが、布川のお母さんから教えられたというレシピをもとに、ぜんまい、昆布、里芋、ニンジン、こんにゃく、ゴボウ、干しシイタケのけんちん汁の具材を調理。豚肉は入れず、自然の恵みだけでおいしくいただける田舎の味です。コメは、ゼミ生が松(まつ)之山布川地区の「まつ」と実践女子大学の学生を示す「むすめ」を掛け合わせた「まつむすめ」を使用しました。
まず、カワセミハウスの庭で、村田さんがまつむすめを入れた炊飯器の釜をかまどにセット。その上で、学生たちが村田さんの説明を受けながら、リサイクルの為に回収した牛乳の紙パックを点火しやすいように加工して、かまどの左右にある丸い投入口から燃料として計18回投入して炊きました。ごはんは、蒸らしを含めて約35分で出来上がり、調理場で釜のふたが開けられると、白い湯気と共にほのかな甘い香りが広がり、粒が立ったつやつやしたごはんが姿を現しました。
日本紙通商が提供した牛乳の紙パックを刻んで燃料に
炊飯器の投入口から点火
布川の皆さんの協力で、学生が手植え、手刈り、天日干し
まつむすめは、大学との交流を中心的に進める布川地区協議会事務局長の小野塚建治さんが提供する水田で、学生が季節ごとに布川を訪れ、1尺(約30センチ)間隔の「手植え」、「手刈り」、格子状にはせがけする「天日干し」をして、丹精を込めて作った魚沼産コシヒカリ(従来品種)です。炊飯器のふたが開けられた瞬間、見守った学生や布川の関係者から「おー」という歓声が上がりました。調理したごはんやけんちん汁は、近所の常連の家族連れにも振舞われ、「ごはんがとてもおいしい。けんちん汁は野菜嫌いな子供も良く食べています」と喜んでいました。
また、布川ファーマーズマーケットには、布川の野菜や新米、新米で作ったもちなどが販売され、飛ぶように売れていました。
出来上がったおにぎりとけんちん汁
大勢の人たちが集うファーマーズマーケット
学生の西村さん「布川は第二のふるさと。あったかい」

現代生活学科4年、西村瞳さんの話
夜になると、夏の雨上がりはカエルの大合唱、秋になれば虫の鳴き声が響き渡ります。布川の人たちはみんなあったかい。道で会ったりすると、立ち話になり、お世話になっているお母さんの家にアポなしで行ってもお茶を入れてもてなしてくれます。都会ではできないことが布川では自然にでき、学生にとっては、「第二のふるさと」のようなところ。カワセミハウスで、布川の野菜やコメを提供することで、私たちの活動を知ってもらい、布川のことに興味を持ってもらうことができるので、ファーマーズマーケットをやる意義はあると思います。卒論のテーマとして、この取り組みをまとめていきたいです。
タイガー魔法瓶の村田さん「いいねと言ってもらえ、ありがたい」

タイガー魔法瓶株式会社ソリューショングループ商品企画第2チーム主査「魔法のかまどごはん」プロジェクトリーダーの村田勝則さんの話
別のプロジェクトでご一緒している日本紙通商さんから声をかけていただきました。「魔法のかまどごはん」を車に積んで全国を回っていますので、取り上げていただく良い機会と思い参加しました。弊社は、関東大震災があった年に創業。震災ではガラスの魔法瓶が落下しても割れなかったということで有名になりました。震災から100年のタイミングで2023年に出したのが魔法のかまどごはんで、植木鉢やバケツなどにセメントを流し込んで約70個の試作品を作り、約2年かけて完成させました。品質管理で確保している炊飯器の釜は、製造中止から約10年で廃棄されますが、捨てるのがもったいないという発想で商品に使い、もう一度、震災に寄り添うようなものとして作りました。一番苦労したのは、電化製品を売る会社なのに、電気を使わない製品を発売することに対し、会社からOKをもらうことでした。今回、自分で作った炊飯器を見てもらっていいねといってもらえたのは、本当にありがたい。
日本紙通商の龍田さん「お互いがウィンウィンの関係になれる」

日本紙通商株式会社の龍田博之経営企画部長代理の話
もともと、タイガー魔法瓶さんとは、「防災」と「仲間作り」がキーワードのキャンプをテーマにした別のコンソーシアムでご一緒する間柄。日本製紙グループでは、これまで捨てられていた紙コップの回収、リサイクルに新たに取り組んでおりますが、非常時に魔法のかまどご飯の燃料に使って貰うことで、互いの取り組みの拡大につながると思いお声がけしたら、タイガー魔法瓶さんが協力してくれることになりました。今回は紙コップを使わず、「魔法のかまどごはん」で検証済みという、本来リサイクルするための牛乳パックを使用しました。我々は、牛乳パックや紙コップを災害時に役立つとして回収に努めていますが、タイガー魔法瓶さんにも、魔法のかまどごはんにも使える紙コップを回収しませんか、となれば、お互いがウィンウィンの関係になれると思います。
布川の小野塚さん「タイガー魔法瓶さんの協力、非常にいいこと」

布川地区協議会事務局長の小野塚建治氏の話
布川では、6アールの水田を学生に提供して、手植え、尺植え、稲刈り、天日干しの昔からの農法を基本に体験してもらっています。教えているのは、山里布川米のメンバー6人です。どの学生も田植えはだいたいできますが、稲刈りは、わらで稲の束を結ぶ作業があり、大変です。私たちもイベントの時にしかやらなくなったし、家によってわらの結び方も違う。タイガー魔法瓶さんの協力によって学生が作ったお米が、炊き立てのごはんとして、日野の皆さんに試食で提供できることは非常にいいことだと思います。
須賀教授「学生には意義や社会的な価値を知ってほしい」

生活科学部の須賀由紀子教授の話
須賀ゼミが地域の活動拠点とさせていただいている日野市カワセミハウスは、様々な人々が持つ夢や力をつなぎ合わせる場として、開設されています。そのカワセミハウスで、環境配慮のリサイクル・安全安心な地域社会づくりの思いが共有できると素敵だな、という考えが原点にありました。また、野外で炊ける炊飯器が、「お米本来の美味しさを味わうことのできる商品」と伺って、山の清水で丹精込めて作られている布川の新米を味わうにはぴったりだと思いました。布川の生産者の思いが、お米の「美味しさ」の中で伝わり、離れた地域と地域がつながる機会になればと考え、コラボレーションが生まれました。
ゼミの学生と布川との活動は年数を重ねてきていますが、そこにさらに、企業のお取り組みを連携させることで、新たな可能性が広がるのではないかと思います。そして何よりも、学生自身にとっても、これからの地域づくりを実践的に学ぶことができます。今回が初めてのコラボレーションでしたので、まずは「顔合わせ」。今後また発展ができると良いなと思います。