竹内 光悦 教授 「演習での取組み」
ベスト・ティーチング賞を受賞して

このたび、ベスト・ティーチング賞をいただき、大変うれしく思っています。今回の受賞は、私一人がいただいたというよりも、演習 IIIでさまざまな課題に取り組んできた学生と一緒にいただいた賞だと感じています。
受賞のきっかけの一つとなったのが、「統計グラフコンクール」や「データ解析コンペティション」など、学外のコンテストやコンペティションへの学生の挑戦と、そこでの数々の受賞です。もちろん私自身は、コンペ等で賞を取ることだけを授業の目標にしているわけではありません。むしろ大切にしているのは、学生が大学の外に出て、自分たちの力を試すことです。また、その過程でゼミの専門である社会調査やデータ分析の能力を高めることはもちろんですが、それだけでなく、社会問題への興味・関心を深めること、グループで課題解決に取り組む力を身につけること、発表に向けて情報機器を活用する力を高めることなど、さまざまな側面での学生の成長につながります。
大学の外に「挑戦する場」をつくる
演習 III では、学生が複数の学外コンペティションに挑戦します。授業の中で課題に取り組み、教員から評価されることももちろん大切です。しかし、それだけでは、自分たちが身につけてきた力が大学の外でどの程度通用するのかは、なかなか分かりません。そこで私は、学外のコンペティションを、学生が「社会に通用する力を試す場」の一つとして位置づけています。
コンペティションでは、他大学の学生をはじめ、さまざまな参加者が同じ舞台で成果を競います。そこでは、授業だからという理由で評価してもらえるわけではありません。自分たちが社会課題に対してどのような問題意識を持ち、データから何を見いだし、それをどのように説明するのかが問われます。
学生にとって決して簡単なことではありませんが、だからこそ、大学の中だけでは得られない学びがあると考えています。
「教える」のではなく、「考える」ことを支える

こうした活動で私が大切にしているのは、できるだけ「学生主体で進めること」です。
もちろん、学生だけですべてを進められるわけではありません。定期的に進捗を確認し、行き詰まっているところがあれば一緒に考えます。しかし、教員が「このテーマにしなさい」「この分析をしなさい」と答えを示してしまえば、完成度の高い成果物はできたとしても、それでは学生自身が考えた成果とは言いにくくなってしまいます。
そのため、私はできるだけ助言にとどめることを意識しています。
学生自身が考え、実際に分析してみる。思ったような結果が出なければ、なぜうまくいかなかったのかを考える。そして、必要であればテーマや分析方法を見直す。その試行錯誤の過程そのものが、大切な学びだと思うからです。
教員の役割は、学生に代わって答えを出すことではなく、学生が自分たちで答えに近づいていくことを支えることだと考えています。
自ら課題を発見する学生へ
こうした活動を続けていると、学生の変化を感じる瞬間があります。
特にうれしいのは、最初は教員からの指示を待っていた学生が、次第に自分たちで課題を発見し、主体的に動き始めることです。
データを分析していると、当初考えていた通りに進まないことは珍しくありません。むしろ、思い通りにいかないことの方が多いかもしれません。そのときに「先生、次は何をすればよいですか」と尋ねるのではなく、「ここに問題があるのではないか」「別の見方をしてみよう」と学生自身が考え始める。そのような姿を見ると、分析の技術だけではない成長を感じます。
データ分析では、正しい手法を使えることも重要です。しかし社会では、「何が問題なのか」そのものが最初から与えられているとは限りません。自分で課題を発見し、その課題について考え、必要なデータや方法を選び、他者に説明することが求められます。
学外のコンペティションへの挑戦を通して、そうした力を少しずつ身につけてもらいたいと考えています。
失敗を恐れずに挑戦してほしい
学生に最も伝えたいことは、「失敗を恐れないでほしい」ということです。
コンペティションですから、当然、すべてのチームが賞を取れるわけではありません。一生懸命取り組んでも評価されないこともあります。また、分析の途中で、時間をかけて進めてきた方法がうまくいかないこともあります。
しかし、私はそれを失敗だとは考えていません。
大学で学んでいる間だからこそ、うまくいかない経験も含めて、さまざまなことに挑戦してほしいと思っています。挑戦して、考えて、時にはやり直す。その経験が、次の挑戦につながります。
今回、学生たちが学外のコンペティションで受賞という評価をいただけたことは、大変うれしいことでした。一方で、教員としてそれ以上にうれしいのは、その過程で学生が自ら課題を発見し、主体的に行動するようになったことです。
だからこそ、今回のベスト・ティーチング賞も、学生たちと一緒にいただいた賞だと受け止めています。
これからも、教員が答えを教えるだけの授業ではなく、学生が自分で考え、挑戦し、ときには失敗しながら成長できる授業をつくっていきたいと思います。そして、演習 III での経験を通して身につけた力を大学の中だけにとどめず、それぞれが社会に出たときに生かしてもらえたら、教員としてこれほどうれしいことはありません。
今後も、学生一人ひとりの主体性をさらに伸ばし、失敗を恐れず、大学の外へ一歩踏み出して挑戦できる学生を育てることを目指して、学生とともに私自身も挑戦を続けていきたいと思います。
末筆になりますが、本受賞に関して、大学・学部・学科の教職員のみなさま、またコンクールやコンテストを開催している関係者のみなさまに、改めてお礼申し上げます。そしてなにより、これまで演習Ⅲでさまざまな挑戦をしてきた竹内ゼミの学生のみなさんに、心から感謝します。演習Ⅲの受講は1年間ですが、この演習で身につけたことは、社会に出てからもきっと役に立つはずです。卒業後、また研究室に遊びに来た際には、その後どのように生かされているのか、ぜひ教えてもらえたらうれしく思います。これからも一緒に頑張りましょう。







