Studies:研究について



環境行動研究EBS

空間デザイン研究室では、「環境行動研究(Environment-Behavior Studies)」という視点を大事にして、研究を行っていきます。これは、環境と人の行動とを独立した存在として捉え、一方が他方に与える影響を分析するということではなく、環境と行動とがつねに互いに影響を与え合いながら密接に関わり合う存在として捉え、固有な環境における固有な人の行動を丸ごと把握しようとするものです。

私たちの生活とは、快適で便利な環境さえあれば自動的に豊かな生活が保障されるというものではなく、私たちが自ら環境に対して働きかけ環境を少しずつ創り出していったり、そのプロセスの中で私たち自身も少しずつ変わっていく、つまり成長していく中でこそ、豊かな生活が実現できるのではないでしょうか。そのような人と環境との関わりを価値として見出していくこと、そのような関わりのもてる環境を価値あるものとして捉えていくこと、それが環境行動研究の目指すところの一つかもしれません。

ときには環境の側から、ときには人の行動の側から、さまざまな環境におけるさまざまな現象にアプローチし、人と環境との豊かで複雑な関係に触れながら、環境の質の豊かさを語る言葉=概念を増やしていきたいと思っています。

空間デザイン研究室の研究例

【高齢者施設の環境評価】

高齢者は社会的弱者として捉えるよりも、むしろ環境の質に敏感な存在として捉えられます。とくに高齢者施設に入居するような要介護高齢者は、その施設環境の質に強く影響を受けます。施設を利用したりそこで暮らしている高齢者の生活に焦点を当てることによって、環境の質を捉えることができるでしょう。

【都市の魅力・都市の公共性】

まちの楽しさ、都市の魅力は、単に眺めて美しいということではなく、その中に身を置いて、その中で歩き回ってみたり、その中のさまざまな施設を利用することにこそあるでしょう。そうした魅力はおそらく、建物や施設、景観といった物理的な要素だけでなく、そこを維持管理する人、そこに訪れる人、そこに身を置いている多くの人の存在にも拠っていることでしょう。

【地域資源としての施設・場所】

まちや地域に個別に存在するさまざまな場所、たとえば個人商店は、そこを利用する人にとっては単なる消費の場を超えた意味を持っていることがあります。ときにはコミュニケーションの場であったり、情報収集の場であったり、あるいは落ち着く居場所になることもあるかもしれません。実は地域の中で重要な役割を果たしている可能性があります。

【居場所づくり】

明確な目的がなくてもふらりと訪れることができ、そこで他の人と気軽にコミュニケーションをとれる場所、自宅ではないのに自分の居場所のように思える場所は、サードプレイスと呼ばれています。かつては街の中に多様に存在したそのような場所を、新たに創りだそう、復活させようとする試みが、さまざまなところで起きています。

【都市・地域の課題】

まちや地域、住まいに至るまで、その環境の中には、住人のみならず、そこで商売する人、そこを計画する人、単に通り過ぎる人等々、さまざまな人の思惑が渦巻いています。そこにはさまざまな意見の対立もあれば、立場の異なる人同士の利害関係の衝突もあります。中には、私たちの環境の質を脅かすような課題が潜んでいることもあるかもしれません。

【住まい力・住まいと地域との相互浸透】

現在の日本の住まいの多くは、主に家族のためだけのプライベートな空間となっていますが、かつての住まいとは、家族以外のさまざまな人にも開かれ、仕事や接客、季節の行事など多様な役割を担っていたようです。そこにはさまざまな暮らしのかたちが環境の中に刻まれており、同時にそれが人々の生活様式を支える力ともなっています。

【計画された環境の成熟と変化】

団地からニュータウンに至るまで、計画的・人工的に形成された住宅地は、それぞれ当時の住宅・住宅地に対する思想を色濃く反映しています。そして時間の流れによって、多くの人の生活が蓄積され、さまざまな歴史が刻み込まれていくとともに、そこには新たな価値と課題が浮かび上がることでしょう。そこから現在の住まいを捉え直すような、新たな視点が見つかるかもしれません。

【住まいにおける環境構築】

住まいは、私たちの生活にもっとも親密な環境です。その環境は、最初から住みやすいものとして与えられたものではなく、日常の生活の中で住み手が手を加え、自分の好みや生活パターンに合わせて創り出したものであると言えます。住まいの環境をじっくりと捉えることで、人と環境との豊かな相互浸透的な関係が見えてくるかもしれません。

【子供の発達を支える住まい環境】

子供も高齢者同様、環境の影響を受けやすい存在といえますが、物理的に成長するとともに、環境に働きかける力をだんだんと獲得し、また成長のプロセスに伴うさまざまな要望が明確化する時期でもあります。発達心理学等では物理的な環境の影響は過小評価されているような気がしますが、むしろ環境との関係を創り出していくプロセスこそが発達に他ならないとする見方もあります。

【子供の発達を支える施設環境】

子供を対象とした施設はその目的・機能によって、居住施設、教育施設、保育施設、等々と分類されています。しかしいずれも、子供の生活を深く取り巻き、子供の生活に強く影響を与えています。そこでどのようなサービスを提供するのかという機能的視点ではなく、子供がそこでどのように過ごし、どのような関係や価値を獲得していくのか、という発達的視点から、環境の意味や役割を捉えられるのではないでしょうか。

【人と場所・景観】

私たちの見ている景色、私たちの好む場所など、「見る」「利用する」対象として捉えがちですが、実は私たち自身がその中に入り込んで体験したり、そこに思いを馳せることによって、その景色や場所の価値が生み出されています。ふだん見慣れた景色や場所も、捉え方の視点を変えることによって新たな一面を見、つい見逃しがちな価値を再発見することができるかもしれません。

【人を取り巻く社会的環境】

私たちの生活に影響を与えているのは物理的環境ばかりではありません。むしろ家族関係や友人関係などを含んだ社会的な環境に大きく左右されているのかもしれません。そして、家族関係と住宅、近隣関係と地域環境、友人関係を創り出すさまざまな場所など、物理的な環境と社会的な環境とはきわめて密接な関係があります。


2003-2024, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2024-02-27更新